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2006/09/09

大地の芸術祭 越後妻有アート・トリエンナーレ2006-その1

新潟県で開催中の大地の芸術祭は9月10日まで。もう遅い!と怒られそうですが、ガイドブックを編集し、美術手帖にも書き、(頼まれてはいないが取材を兼ね)搬入も少し手伝ったしで、一時休止したくて書けなくてすみません。会期頭と8月末の2回行ったので、新作だけダイジェストでご紹介。今回は特に、廃校を含む空き家を再生して展示するプロジェクトが特徴的だ。

01dadan_1TanakaTsumarihanda(左から)中里エリアより 183:ダダン・クリスタント、187:田中功起(パレ・ド・トーキョー)、180:半田真規

100円マップで見るものを目星つけて行きましょう。越後妻有6エリアを回るには、十日町から北回りと南回りがわかりやすいですが、十二峠トンネル〜清津峡トンネルを抜けて中里からも回れます。棚田のあぜ道に鳥追いの竹を約60本立てたクリスタントの作品。風が吹いていれば風車がカラコロ音を立てて人形が動く。風の向きで、大きく聞こえるポイントに立つと涼しげな音。用水路の水音と混ざります。パレ・ド・トーキョーの作品はピンとこないが、田中功起の作品は、モニターを見ていると「!」。展示場の2階へ長靴が放り投げ込まれる。 半田真規の竹ブランコは各所に。重力とかストロークとかを感じますが、大地をつかまえて歩く(じゃないと山道転ぶよ)芸術祭であえて宙吊り。中里エリアを俯瞰して考えると、集落の地図のなかで振り子が触れてるようでもある。

OfuraharaBoltanski01Bol02津南エリアより 156:クイビーン・オフラハラ   松之山エリア 2枚とも329:クリスチャン・ボルタンスキー&ジャン・カルマン

2003年度のキム・クーハンの「かささぎの家」から近い左手にオフラハラの水上(休耕田)の家。中に入ると涼しい。天井を見上げよう。さて、皆ボルタンスキーっていうけど、ジャン・カルマンもね。前回と同じ旧東川小。松之山温泉方面から抜けて来ると建物の黒シミがこわい。全編光と闇だけで展開され、途中心拍数が上がるような音もあり。回転するファンが窓ガラスに映っている場所が、特にカッコイイよとシビレます。

TumarinariwordTsumarimaruyamaNichidai02松之山エリアより 316:ナリ・ワード  松代エリアより 291:丸山純子 289:日本大学芸術学部彫刻コース有志

ナリ・ワードは、村の不在の人の持ち物を木にくくった。アフリカの儀式にならい、皿も割られています。川のそばで、ふぅっと時間を変えている。ただ、もしかして(写真でしか見ていないけど)自作のガラス瓶のインスタレーションを超えていないのでは、という気がするんですよね。エルネスト・ネトもインタラクティブでもピリッと効いたところがあるはずで、でも東京の作品も含めてなぜかゆるくなる。親和的なのは良いのですが、日本に合わせようとし過ぎてるのか、影響を受けやすいのか。丸山純子のスーパーのビニール袋の花はグッと昇華している。壁も床も天井も彫りまくった日大の家は意外とさわやか。寝転がりたくなる。彫りの陰影が特に美しいのは自然光の入る時間。


SugiuraTsumariotaniSaitominako288:杉浦康益 286:大谷俊一 208:斎藤美奈子

杉浦康益の陶のブロックを積んだ壁は、脇を歩くとすきまからも景色が楽しめる。冬は雪囲いにすると莫大な費用がかかるので、崩してまた来夏積み上げるそうだ。今回、陶の人の情熱はすごいんです。集落の人から写真を集めて素材とした大谷俊一と斎藤美奈子。村の人が普通に撮った写真はほんとにいい。おばあさんの花嫁道中にテーマを絞り、その道のりで見たであろう風景を撮った写真とともにつくりあげた斎藤の空間には、結婚に限らず、山向こうの見知らぬ場所へ足を踏み入れる不安や、覚悟がみなぎる凄みがあった。大谷は誠実だけど、集落の人々の中に入り過ぎたようにも思う。入り込んでも批評ができる強さが必要だ。私自身もドキュメントで悩むところだから、いい作品だけにあえて言う。

その2に続く。

words:白坂ゆり

2006-09-09 at 02:28 午前 in 展覧会・イベント情報 | Permalink

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