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2006/02/03

バレエ・プレルジョカージュ「N」

Ko_10000019_6photo/JC.Carbonne

上演時間の最初から最後まで1時間15分ずっと、低周波とストロボのなかでダンスを見るとは思っていなかった。繰り返し終わらない人間の争いや暴力、愚かな性(さが)の怖さを、ある意味無感情に、ダンサーたちのしなやかな線で展開し続けている。顔はほとんど見えず、身体の輪郭もあいまいになるため、サーモスタッドのように肉体の色だけが見えていたりもした。ストロボのために、ダンサーが床を張っているのに舞台が動いて見えたりして、自分の椅子が浮いて舞台に目との距離がぐっと近づくような、意識がもうろうとする感じもあった。

ふだんマイペースで現代美術を見ているからだと思うが、椅子に拘束されて逃げ場がないという状況で、ソワソワし出したり、まぶたが下りそうになるときもあり、というのは退屈なのではむろんなくて、身体がどこかで逃れようとしているということがわかった。焦点がバラバラになるが、それも動きとストロボのせいで目玉がせわしなく動かされている感じだ。
起承転結があるストーリー仕立てではない。残像だけが残るラストシーンのあと、カーテンコールでようやくダンサーの生身の顔が見え、椅子に縛られていたような「縄」が解けたとき、涙がぶわっと出て来た。大きな拍手が起こっていた。
帰りに地下鉄に乗っていてもどこか足がすくんでいる。気持ちは重くのしかかる。でも見て良かった。

テレンス・マリックが、人々の知覚をマヒさせる(ハリウッド)映画への責任を負うように、映画『シン・レッド・ライン』のなかで、肉体の脆さや生々しさを描いたことを思い出したりもした。

2月4日・5日には、ファブリス・イベールがカオスグラファーを務める「Les 4 saisons...(四季)」の上演がある。まだ座席に余裕があるそうなので、駆け込みでもチケットをゲットしてほしい! こちらは楽しいし、とにかく見て損はないオススメです。

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words:白坂ゆり

2006-02-03 at 12:45 午前 in 展覧会レポート | Permalink

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