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2005/03/19
パラモデル新作展
「夢か現か すれすれの」
京都のmori yu galleryで、「極楽模型」を制作のテーマにする中野裕介と林泰彦の二人のユニット、パラモデルの新作展が開かれている。街なかにありながら、奥へ入ると車の往来の音も聞こえないほど静かで趣きのある町家のギャラリーの中庭を挟んだ二つのスペースに、「観光地」をキーワードにした写真、立体、ドローイングなどが展示されていた。
浴衣で砂丘にたたずむ女性たち、広場でシカと戯れる子ども、温泉場に大勢の男女が配置された写真は、想像のたやすい観光名所が背景だが、インパクトの強いモデルの表情も妙に素っ気なかったり遠くを見るような視線で、夢とも現実ともつかない印象を残す。酒類の促販ポスターさながらに、「極楽酒」というワンカップ酒を手にして岩場に腰掛ける女性の写真もやはり浴衣姿。オジサンが店で若い女性のポスターと対面しながら酒を飲む、そんな極楽気分をイメージしたのだという。ちなみに隣には同じシリーズの男性版も展示されていた。和室の展示スペースの床の間には鹿とプラモデル風の半人半獣像。壁には、夢の出来事のような不思議な絵が描かれた絵馬形のドローイング作品が吊り下がっている。
絵馬は日常生活者と神とをつなぐ使者でありこの世とあの世をつなぐ装置。集積が願いのパワーを増大させるかのごとく、神社の絵馬所は人々の願望の増殖によって埋め尽くされていくが、それはある量に達するとあっさりと取り去られてしまう。願掛けは、願いが異世界に届くまでの間の儚い夢のひとときだ。オジサンが女性の促販ポスターとともに極楽気分を味わうのも同じだろう。その深層には日常というくたびれた感情や疲労が沈澱している。でもだからこそ夢を願ったり、異世界へ想いをめぐらす愉しさがあるというもの。
パラモデルの作品は、現実と夢がつながる際すれすれの極楽への入り口であって極楽ではない。どの作品にも美しい要素とユーモアがある。だけどどこかうらさみしい雰囲気を感じるのは、それが日常的な感覚とさほどかけ離れていない世界に思えるからだろうか。
ところで観光は、わざわざ行くもの。その地を訪れわざわざそこで何かを見るから観光になる。その先に何があるのかと胸を踊らせる期待と好奇心と想像は日常から離れその場所に辿り着くまで膨らむ。極楽と観光は、本当はどちらも骨を折って足を踏み入れる前こそが最高なのかも知れない。
パラモデル新作展 極楽横型
2005年2月25日(土)〜4月2日(土)
mori yu gallery
京都市中京区室町通御池上ル御池之町311
(地下鉄烏丸線「烏丸御池」駅2番出口より東に徒歩3分)
12:00〜19:00
日祝休 (月曜予約制)
words: 酒井千穂
2005-03-19 at 07:31 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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