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2004/01/19

パク・ヨンスク写真展

「現実と<現実/マッド>の間」 


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■韓国の女性写真家パク・ヨンスクさんの個展が大阪で開かれている。展示されているのは、近年制作している"マッド・ウイメン"というシリーズで韓国の女性を被写体にしたもの。韓国の女性達の日常に潜む、目に見えない抑圧がどういうものかを意図して写真に表現されている。

■伝統や制度といった、歴史の中で形成された女性への社会の要求や、理想化された女性観はどの国にも存在するだろう。会場に並ぶ写真には、尋常ではない女性達の姿と一緒に、キッチンや韓国の伝統的民族衣装のチマ・チョゴリといった日常生活に当たり前に存在するものがおさまっている。暮らしの一コマに見える光景も台詞や表情のように狂気を導く記号として示されている。作品は、精神のバランスを崩し病院に入院している女性達を実際に訪れ、その取材をもとに制作されたのだそうだ。

■バスルームで鏡と向き合っている女性の頬には自分でつけたと思われる青い塗料。鏡越しに映る視線は自分自身を見ているのかそれとも写真の中には登場していない何かを見ているのだろうか。一本のバラを手にして膝を抱えている裸足の女性の口のあたりには紫色のアザがある。着ている裏返しのカーディガンについた肩パッドは天使の羽のように見えるが、その様子は痛々しい。

■被写体となった女性達は、現実に狂気が表面化した女性達の姿を再現するように演じているわけだが、その虚ろな表情は、内面に鬱積したものがリアルに迫ってくるようで迫力がある。初日にこの展覧会を訪れた男性達から、気後れしてしまいそうだとの感想があったというのも納得だった。

■韓国の歴史の系譜の特殊性もあるだろうが、作品は、その土壌から離れても共感できる普遍性がある。観る人はきっと、日本に暮らす私達、女性達の現実はどうだろうかと思いが移ってゆくだろう。パクさんは現在、日本の女性を被写体にした作品の滞在制作中で、関連して開催されるシンポジウムでは、制作風景のビデオも上映される予定だという。韓国の女性を見つめてきた彼女が滞在制作でどのように日本の女性の姿を表現するのか、そちらもとても気になる。

パク・ヨンスク写真展マッドウイメン/日本
2004年1月19日(月)〜2月7日(土)
The Third Gallery Aya
大阪市北区西天満2-8-1大江ビル1F
(大阪市営地下鉄御堂筋線「淀屋橋駅」1号出口より徒歩5分)
12:00〜19:00(土曜は17:00まで)
日曜休
入場無料
TEL.06-6366-8226


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2004-01-19 at 04:17 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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