« Vol.52 金氏徹平(Teppei Kaneuji) | メイン | 岡本純一展 六畳の水槽 »
2003/11/14
竹川宣彰展
「回る」
「夢枕—観覧車」
■観覧車が回っている。回っているのは、色も大きさも異なる枕だ。使った痕跡のあるもの、新しいもの。それは過ぎて行く出来事かもしれないし、さまざまな人の人生の集合かもしれない。何にせよ、何かを意味するというより、それがただ回っている「時間」に委ねてただ見ている自分になれる気がした。
■作家の言葉には「人は寝ているとき、ただその人になっている。生い立ち、先祖、年齢、性別、経歴、地位といったことに関係なくただ眠い。寝ている時間を意識的にその人に近づけられないかと思った」と書かれている。「ただその人として眠ること」。
■私は今年に入って、意識的に眠ることをしている。眠ると記憶が整理されて文が書きやすくなるからだ。まあそれも「デキるための術」みたいで嫌だけど。ただ、夢の中で、起きていたときの出来事が様相を変えて出てくると、ほんとはあんな風に思っていたんだなあと自覚させられたりもする。そんな大人な態度もありつつ、子供のようにただ眠ることをしていた。
■人は生まれてからいろいろな出来事に出会って、何者かにならなくちゃいけない気がして、たくさんのことを身に付ける。しかし、「現実」の見え方は人それぞれの切り取り方で違っていて、そして身に付けたものの中に、1個の人間としてではなく、社会的にそうなるようにさせられていた「見え」というものがあることに気づく。そしてもう一度、身に付いたものを振り払い、自分本来の「見え」を探って行く(そうならない人もいる)。
■竹川は大学時代、「507」という名称で、教室をスタジオ兼展示として使い、数人で活動していた。そのとき「ファイル展」というのがあって、線に囲まれて真ん中が空洞のようなドローイングが記憶に残った。卒業後の前回の初個展ではボート、カラス、父との囲碁の対局のビデオなど、そのものが出された(ホームページの竹川作品を参照)。彼が、美術のようなものを外して、自分の見直しにかかっている気持ちはわかるような気がしながら、「つくる」ということが何なのか、こっちでいいのかなあと私は思った。でもこのとき「ただのボートをただ見ている自分がいた」と彼は書いている。のろしを上げた気分だったと。なんとなくそれも身にもつまされないではない。<竹川くんが何かから逃避していたのではなくて、見る私が逃避していたのかなあ>とも思う。
■観覧車の脇に枕があり、ポケットがついている。好きなものを入れたい。でも、なんにも入れなくてもいいやという気分もある。いやあでも、誰かが描いた落描きみたいな絵は入れようかな。
竹川宣彰展
2003年11月14日(金)〜12月20日(土)
オオタファインアーツ東京都港区六本木6-8-14
(六本木駅3番出口より5分)
11:00〜19:00
日・月曜・祝日休
TEL.03-5786-2344
words:白坂ゆり
「'夢枕—観覧車'のためのドローイング(魚)」
「夢枕—愛犬家の場合」
「夢枕(牧場)」
2003-11-14 at 12:08 午後 in 展覧会レポート | Permalink
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d01538ef4003f970b
Listed below are links to weblogs that reference 竹川宣彰展: