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2003/10/28
ヤマガミユキヒロ展
「現実のコラージュ」
「すべては、あなたが、そこに、いたから」
■画面には、駅の線路に繰り返し到着する電車、ホームを行き交う人々の姿が映し出されていた。一見、駅でのある一日の光景を短縮して映し出したドキュメンタリーのようにも見えるが、なにか違和感がある。よく見ると、線路の上に繰り返し現れる電車は動画で、次々と切り替わっていく人々の姿は静止画像だった。そして、ほんの一瞬、全ての映像が消えた時、画面には駅のホームや線路の風景が描かれていることがわかる。
■ヤマガミユキヒロさんは、これまでも油画の背景の上に映像を映し出す作品を発表してきた。描かれた線路に電車が到着するこの作品は、ムービーカメラと静止カメラを使い、3ヵ月間をかけて同じ位置からJRの駅の光景を定期的に撮影したのだという。人々の姿が全身映るのでなく、上半身で途切れているのは、ファインダーに被写体が収まる範囲の限界があるためだそうだが、それは、この作品が完全なドキュメンタリーでなく、コラージュされた作品であることに気づく要素にもなっている。
■バラの花が回転しながら、枯れてゆくまでの経過が映し出される「STILL LIFE」は、その様子をずっとビデオカメラで撮り続けた映像のように見える。けれど、実はそうではなく、毎日撮った写真をパラパラ漫画のようにつなぎ合わせて作ったのだそう。断片的な時間の経過をつないだフィクションだが、スクリーンの中で起こっていた出来事はノンフィクションに変わりない。それを際立たせるために静止画像を使うことにこだわったのだという。単純に植物の状態が変化する様を見せるこの作品は、人々の往来の光景を投影した作品とは違い、あまりドラマチックな要素は感じない。けれどシンプルなだけに、作為によって出来上がったリアリティが感じられて、逆に幻想的に見える。
■映画を見ていて、脈絡のない場面で新たな人物が登場したり、時間の経過が随分カットされていることに気づくと少し戸惑う。感情移入して集中していたらなお、ストーリーよりも、その場面をつないだ間にどんなシーンがあったのかが気になって、現実の感覚に引き戻される。その時はじめて、場面と場面を切ってつなぎ合わせるという制作の過程も意識する。ヤマガミさんの作品はそれとは逆に、フィクションである部分に思いがおよぶ気がした。面白い手法を使った映像はリアルだけれど、夢のような幻想が入り混じる。
ヤマガミユキヒロ展
「Non Fictional Fiction/ 架空の事実」
2003年10月28日(火)~11月9日(日)
ギャラリーココ
京都市東山区三条通り神宮道東入南側ホリホックビル2F
(地下鉄東西線「東山」下車1番出口より東へ徒歩5分、又は市バス5番「三条神宮道」下車すぐ)
12:00~19:00(最終日17:00まで)
入場無料
TEL.075-752-9081
画面には線路やホームの風景が描かれている
STILL LIFE
映し出されているのはバラの花が枯れていく様子。
2003-10-28 at 11:54 午前 in 展覧会レポート | Permalink
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