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2003/02/18

サイバー・アジア展

「リアリティのありか」


art177_03_1八谷和彦「エアボードγ」「エアボードβ」展示風景


■中国、台湾、日本といったアジア出身のアーティストたち12名によるメディア・アートの展覧会が広島市現代美術館で開かれている。「サイバー」とか「メディア・アート」といった言葉がタイトルについても、ここでは拒絶反応をもはや示す人はいない。作品の一部に触れたり、キーボードを操作する体験型の作品にも鑑賞者は近頃すっかり慣れていて、監視の方の一言があれば、皆が作品にどんどん積極的に関わってゆくようになった。

■minim++ / y.kakehi(日本)の作品「at 」は砂地を投影したフロアを歩くと、馬蹄形の足跡がつき、馬のいななきが聞こえる。象の足跡の場合には象の鳴き声が聞こえたりもする。複数の人が砂地の上をあちこち移動してゆくと新たな画像がフロアに現れるなどする。コンパスを触ると円形の影が机の上を動いてゆくといった「Tool's life」( minim++)など、観る人がどうかかわるかで作品が変化してゆく。

■ポール部分を触れると布団が燃えたり、破れたりする映像がベッドに映し出されるユェン・グァンミン(台湾)「眠れない理由」を観てあまりのリアルさに、驚いて走って逃げる子供も見かけた。家族の歴史を振り返る電子アルバムといった作品「My P rivate Album」を出品していたのはフェン・メンボー(中国)。それぞれが様々なコンセプトの元に作品を作り出している。

■クワクボリョウタ(日本)は対戦型のゲーム的な作品を展示。シンプルなフォルムの造形にLEDの光が点滅しスタイリッシュなつくりになっている。消滅してゆくものの“血"を見るなどという場面はけっしてない。今、起こっている米イラク戦争でも前線にいる兵士やイラクの市民を除けば、ゲームをするようにスイッチをONにしたりOFFにするだけで人の命を奪ってゆくのだろうか、とそんなことが脳裏をよぎった。

■コンピュータや映像を用いてつくられるアート作品の歴史は未だ浅い。だが、絵筆を持つよりも早い時期に現代の子供たちは、ビデオやカメラといった道具を手にするほどに、メディアとの距離が近くなってきている。会場を訪れた土曜の午前は、子供連れで観に来ている人々が約半数を占めていた。子供たちは何にリアリティを感じる大人になるのだろうか。出品作をどう理解しようか、と考える前に子供たちは心から楽しんでいたように見受けられた。


サイバー・アジア
~メディア・アートの近未来形~
2003年2月18日(火)~4月6日(日)
広島市現代美術館
広島市南区比治山公園
10:00~17:00(入館は16:30迄)月休
入場一般910円、大学生680円、小中高生450円
TEL.082-264-1121

words:原久子

art177_03_2岩井俊雄
[Another Time, Another Space in Hiroshima]
ヘンリー・ムーアのアーチ型の彫刻も画面のなかではよじれている。


art177_03_3ユェン・グァンミン(Yuan Goangming)
「眠れない理由(Reason for Insomnia


art177_03_4シュ・ビン(Xu Bing)
「New English Calligraphy:Computer Font Project」
town art galleryと入力してみました。


art177_03_5minim++
「Tool's Life 」


art177_03_6「サイバー・アジア展」と同時開催で開かれていたエキソニモ「「「ニューファンクション」」」
ワークショップ+エキシビジョンの会場入口風景

2003-02-18 at 11:30 午前 in 展覧会レポート | Permalink

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