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2002/11/15

vol.43 牧谷 光恵(Mitsue MAKITANI)

「フランケンシュタインができちゃった」

makitani

牧谷光恵は、高校からアメリカへ留学し、2年前に帰国。今回の「エモーショナル・サイト展」で、日本で初めて発表する。スチレンペーパーでパーツをつくり、等高線のように何層も重ねてつくる平面と立体のはざまのような作品。なんだか「オヨヨ?」という気分になってしまうが、アメリカナイズでも日本回帰でもない。作品の陰に作者のキャラがにじみ出るような、この作家おもしろい人間だなあと思える作品に惹かれるというが、彼女もどこか奇妙さをもっている。まだ作品は未完成さを抱えているが、天然不思議ちゃんではないからちょっと気になる。

等高線の景色みたいな作品ですね。

■最近、等高線とか等圧線っておもしろいなと思って。人間がものごとを理解しようとしたり、把握しようとする思考回路がおもしろい。その結果がどうこうじゃなく、ある基準を設けて計測しようとする行為に惹かれます。ただ、そこには必ずズレが起きるし、ただシステムそのものをつくっても本のなかのコト、システム論になってしまう。それがほんとうに説得力を持ち得るために、身の回りにあるイメージを“測って”みたいなと思ったんです。

マキタニ式秘密のスケール(計測器)で世界を測り直してみる、という感じ?

■そうそう。でも、それは皆に正しくある必要はない。ふつうの世界では10センチのところが8センチになるような?(笑) 目を細めたときに、輪郭がはっきりしてものがクリアに見えたときのような、違う見方ができるといいなと思って。

メガネをつくるとき、レンズを入れ替えて、ぴったりのものを見つけ出す視力検査がありますよね。ぼやけて遠ざかったり、見え過ぎてキツかったり。で、あるとき、より鮮明にぴたっと見える。フィルターを変えていく、あの感じですかね?

■ああ、うん、そんな感じかな。それでも、理解することが目的ではないんです。完全には理解不能なこともわかっているし、少しでも近付きたいというのでもない。見つけ出す方法を編み出すことがおもしろいんです。

そこからどんな作品をつくってたの?

■たとえば、この頭とモ二ターの作品は、巨頭のなかをヘンな人が動いている映像が映し出されています。頭のなかにさまざまな状態の自分がいて、皮膚とぴったりするような状態もあれば、奥に小さくなって引っ込んでいる場合もある。人と話していて意識が遠のいていくようなとき、ありますよね。このとき目のなかをのぞくと、モニターには中の仕組みばかり写っているんです。そういうさまざまな距離にいる体内の自分の状態を表現してみたかった。

アルバムの写真からドローイングを描くのは?

■システムや哲学とかの偉そうなことも、身の回りのものも、すべて同レベルで日常にあって。ドローイング描いていてもやはり考えていて、なにかわかろうとする方法のひとつなんですよね。ペインティングより、ジャッジ(あるいはアウトプット)が早くできるし。客観的に見ないと描けないんだけど、主観的なことが入ってきて、よりわかることがある。たとえば、小学校を描いたときは、そのときは写真がなくて記憶や思い出から描いて、あとから写真が出てきたらけっこう合っていたんだけど、観察して描くより、よりリアルに分かった感じがしたんですね。ドローイングは立体をつくるのためのものじゃないです。

今回の作品で思っていることは?

■プロセスでできあがった作品を説明するのではなく、作品ひとつで「もの」としての力でもって伝えられるようになりたいです。しかも無意識にではなくて、設計通りにつくったんだけど、フランケンシュタインができちゃったみたいな(笑)、思いもよらないものを今後制作していきたい。
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words:白坂ゆり


eye44_01「足蹴り」2001年

eye44_02「頭とモニター」

eye44_03「Untitled - (No Rest for the Wicked/菊) 」2002年

eye44_04部分。シンプルな模様のパターン。

eye44_5「untitled-(cheer pet)」

eye44_06部分。途中で反転する文様。半永久的な構成。


牧谷光恵(Mitsue MAKITANI)

1973年 千葉県生まれ
2000年 カリフォルニア・インスティテュート・オブ・ジ・アーツインタグレーテッド・メディア/美術学部修士課程修了
グループ展
2000年 The New World of Suzie Wong
(ギャラリ-207/ロサンゼルス,カリフォルニア)
2002年 エモーショナル・サイト展
(食糧ビルディング/佐賀町)

2002-11-15 at 01:43 午後 in アーティスト・ヴォイス | Permalink

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