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2001/04/19
Mega-City
「都市の風景:第一章」
■富山達子によって企画された赤塚りえ子と金子倫子の二人展「Mega-City」。この展覧会は、赤塚と金子の2作品により、都市の地上の地下を、街全体を鳥瞰したり、地下を移動する一人の登場人物をポイントで追ってゆくなどして、都市の多様な側面を一つの展覧会のなかでうまく見せている。
■赤塚の作品はコンピュータの基盤を都市に見立て、ジオラマがさまざまなかたちの内臓チップ 等を用いてつくられている。コンピュータの内部構造と現代の都市の縮図のイメージとをオーバーラップさせていて興味深い。4つの基盤をつなぐケーブルは、情報やライフラインなど、私たちの日常にかかせない様々なもののネットワーキングとも似ている。
■金子のビデオ・インスタレーションは5台のモニターで構成されている。ロンドン の地下鉄の駅をイメージしたアニメーションの中に一人の少女が、あちらのモニターへ、こちらのモニターへと歩き回る。通路や階段・エレベーター・エスカレーターが描かれた場面がどんどん変化してゆく。5台のモニターのうちの1台だけにあらわれる少女。彼女は地下の迷宮を延々とさまよい歩く。この様子はまるで監視カメラがとらえた映像にも見える。
■まったく違った視点からとらえられた都市の風景だ。その地上と地下、手描きアニメというアナログな風合いとコンピュータの部品をそのまま使ったハイテクな印象を与えるものという対比。異なるものの対比によって、その間にあるものを見る者に読み取らせる工夫がされていて、非常にバランスのいい展覧会に仕上がっている。さらに他のアーティストの作品が入ってくるとどんなふうになったのだろうか、と想像するのも楽しい。「Mega-City Part 2」もぜひ考えてもらいたいものである。
■キュレーターの富山を含む3人は、同じロンドン大学ゴールド・スミス・カレッジ出身だ。3人にとっての日本デビューがこの展覧会だ。これからの彼女たちの活躍が楽しみでもある。
■最後に付け加えると、実はこの展覧会はTHE OWL PROJECTという公募で選出され実現したものだ。 これまでの美術系の公募というとほとんどが作品を募って審査するというものだった。 THE OWL PROJECTは、展覧会の企画を募る公募だ。アーティスト自身が自分の作品を展示するために企画したものは対象外としている。展覧会の企画内容の提出と同時に開催までのスケジューリングや予算面などの管理運営について考慮されたものかどうかも審査の対象となる。継続してこの公募は行なわれる予定ということなので、 ギャラリーのHPをマメにチェックして欲しい。
Mega-City
2001年4月19日(木)-5月1日(火)
FUKUGAN + PLUS
大阪市中央区西心斎橋 milaビル4F
12:00-20:00 (最終日-17:00)
入場無料
TEL.06-6253-3266
words:原久子
赤塚りえ子「Untitled」(1999/2000)
4つの基盤がケーブルでつながっている。まさに都市のなかのみえないネットワークを思わせる。
赤塚りえ子「Untitled」(1999/2000)部分、新宿で生まれ育った赤塚の原風景ともいえる街並
赤塚りえ子「Untitled」(1999/2000)部分、新宿で生まれ育った赤塚の原風景ともいえる街並
金子倫子「A Labyrinthine Rabbit Warren」(1999/2000)5台のモニターのなかで一人の女の子が画面から画面へと移動してゆく。
金子倫子「A Labyrinthine Rabbit Warren」(1999/2000)通路を去ってゆく少女。
金子倫子「A Labyrinthine Rabbit Warren」(1999/2000)エスカレーターに乗ってまた彼女は去ってゆく。
2001-04-19 at 12:15 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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