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2001/04/25
山口藍展
「きりり、しどけなし」
外からのぞいた会場は、茶屋みたい。葉を浮かべた壷もいくつかあしらわれている
■作品を通して、女性作家の内なる情熱を感じることがある。性別で話すのは不適当かもしれないが、男性の強さとは種類の異なる熱のように思う。
■山口藍は、人里離れた山奥から岡場所(江戸吉原以外の幕府非公認の遊所。茶屋などを基盤とし、町民に人気を集めた)へ身売りされた9〜13歳くらいの少女を描いている。それがマンガ的なスタイルで描かれているために、現代の女の子の姿にもオーヴァーラップする。まだ自分の運命を把握しきれないスレンダーな少女たちは、恋への憧れや明日をも知れぬはかなさを自分の身体で精一杯受け止めているのように映る。
■以前にまな板にも描いていたが、中に毛布を入れて、寝床や枕のようなキャンバスや桶にアクリル絵具で描いたものもあり、丸みと厚みがコケティッシュさを醸し出している。着物の柄が背景に溶けだした絵は、「きぬぎぬ」(男女の朝の別れで、お互いの着物に腕を通して別れを惜しんだりする)というシリーズ。浮世絵やクリムトなどの装飾的な絵画を思い出すが、朝方の夢うつつの状態で男性の着物の匂いや映像でトリップしてしまい、女の子自身の存在も模様の中にとろけていってしまう、というもの。植物や幾何学模様が、ペタンとした女の子のかたちと調和している。形ある不自由さから逃れて心だけになってしまえたらという危うさとせつなさ。
■山口の視線は、少女たちそのもののようでもあり、その少女たちの守り手のようでもある。自分の憧れとそこに焦がれる自分をケアする囲われた世界のようにも見えるが、一方で現代の他者を慮るようにも見える。和紙の大きな作品や模様を描いた札のようなかわいらしい小品まで新作ばかり126点。デパートの美術画廊という、現代美術作家にはあまりなじみのない空間での展示に、気持ちひとつなんだなと思った。
山口藍展-笑門来福
2001年4月25日(木)〜5月7日(月)
シブヤ西武美術画廊
TEL.03-3462-0111
words : 白坂ゆり
「はるね」毛布、綿布、アクリル絵具
「おてて」
「ころんだゆな」
「竹から出る月」
「あおのりほり」
2001-04-25 at 12:48 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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