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2000/10/21
束芋展
「〈にっぽん〉って…」
映像インスタレーション「にっぽんの湯屋(男湯)」の会場風景
■このTOWN ART GALLERYでも9月のアーティスト・インタビューで登場した束芋の個展を紹介したい。旧作2点と新作2点のインスタレーションに加えて、子供の頃に描いた絵が展示されていた。
■新作「にっぽんの湯屋(男湯)」は、「男」とすりガラスに書いた木の引き戸を開けると、「ケロリン」と書かれた黄色いプラスチックの洗面器の実物が並んでいる。風呂屋の番台から脱衣場、風呂場までが、巧みに3面のスクリーンに投影されている。途中、回り舞台のように、全体がぐるぐるっと回って幕が変わっていったりする展開の仕方も面白い。映像インスタレーションのこれまでの考え方を大きく超越している。
■日本ではまだまだ女性の地位が低いと言われてはいるが、自由にそして奔放に生きる女性が増えていることも確かだ。「にっぽんの湯屋(男湯)」では、むしろ、男性がどんどんと隅っこに追いやられているような場面も現実社会にあることがさまざまな比喩で語られている。女湯から壁を乗り越えて男湯に入ってゆく素っ裸の女性たちは、丸腰で男性社会に飛び込む女性ともとれる。湯が溢れて亀たちが、脱衣場のロッカーの後ろに隠れてゆく。これを見せられると、世の男性諸君は、他人事とは思えないのではないだろうか。
■もう一つの新作「ユメニッキ・ニッポン」は、横位置に作られるのがあたりまえとされてきた画面を縦に使い、花札のかたちを模して柔らかくも厳しく世情を斬ってゆく。これまでの「にっぽんの台所」、「にっぽんの横断歩道」、「にっぽんの湯屋」が浮世絵調の色だったのに対して、とても鮮やかな色使いになっている。どの作品も思わず苦笑いしてしまう。これだけのことをやっているのに嫌味のない毒気を効かせることができるのは、センスのよさとしかいまは表現できない。
■子供の頃の絵に、サンタクロースやお父さんの顔の絵に混じり、幼稚園児だった束芋がなぜか仏画を描いている。それがとても味わいがある絵で、どちらの「先生」が描かれたのか、と確かめたくなるような代物であった。1975年生まれ、今年25歳の束芋は、現在のところ横浜トリエンナーレに出品が決まっている最年少の日本作家でもある。
キリンコンテンポラリーアワード
1999最優秀作品賞受賞作家 束芋展
2000年10月21日(土)~11月12日(日)
KPOキリンプラザ大阪
大阪市中央区宗右衛門町7-2
11:00~21:00(最終日のみ~16:00、無休)
入場無料
TEL06-6212-6578
ひとり、ふたりと、女湯との境の壁を越えて女性が男湯に入ってきています。
「にっぽんの湯屋(男湯)」の映像から
「ユメニッキ・ニッポン」から
左が「ユメニッキ・ニッポン」、右は「にっぽんの台所」
幼い頃に描いた絵を展示した部屋。 左と左から二番目が仏画。 仏さまが生きているように描かれていてビックリ。
撮影:喜納敏文
写真提供:キリンビール株式会社
会場:KPOキリンプラザ大阪
2000-10-21 at 05:47 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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