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2000/09/30
New Generation 00
「いまどきな女の意気」
右)安藤由佳子 Y's life (1999) ミクストメディア(テント、モニターほか)左上)丸尾直子 view 3(2000)キャンヴァスにアクリル 80×200cm
■ 海遊館(水族館)、大観覧車、サントリーミュージアムで知られる大阪港。9月末に新しく湾岸の倉庫を改築した「海岸通ギャラリー・CASO」がオープンした。高い天井、白い壁のこれまで大阪にはなかったタイプのアートスポットとしてこれからの展開が期待される。オープン展の「Towards Utopia」は4つのパートから成り立っているが、その一つ「 New Generation 00」を紹介したい。関西の芸術系大学の教員4名が、それぞれの大学の卒業生を1名選出して実現したグループ展だ。示し合わせた様に、4名ともが女性だった。
■ 5点のシルクスクリーンによる版画作品を出品しているのは井谷奈々。版をさまざまな色のインクを一色一色刷り重ねてゆく。シルクの版にインクが目詰まりをおこして、次の刷りに影響してゆく。井谷の「偶然を必然に変えたいと思ってやっている」という発言が印象的だった。空港の建物と飛行機を描いているのは、丸尾直子。飛行機と木々の緑や、建物と青空など、対照的であるはずの人工物と、背景としての自然とが、ひとつの絵のなかに描き出されている。三浦洋子はパネルのうえにガーゼのような粗綿布を張り、アクリル絵の具で塗っている。絵の具が乾いたときに表面全体に現れるもわれのうねるような曲線が魅力的だ。
■ 安藤由佳子は京都で大学を卒業後渡独、現在デュッセルドルフの美術アカデミーに籍を置き学生を続けている。彼女の作品は、黄色いヘルメット型のテント。カワイイ小物や、食べかけのスナック菓子、ビデオテープ、煌煌と電球のついた黄色いヘルメット、クッションなどが、まるで今の今までだれかがそこにいたかのように雑然とテントのなかにある。小型のモニターに映し出されているのは、ヘルメットを被った作家本人だ。彼女の頭のうえから、容赦なく落ちてくるフォークや箱。テントの外にももう一台設置されたモニターには、なにかを探して手で机の上や引出しのなかを引っかきまわす映像が流れ、最後に部屋の角に転がっているボールをつかんだところで終わる。整理の悪い自分の身の回りに、つい重ね合わせてみてしまい、胸が痛んだ。
■ それぞれに、まったく異なる手法や素材を使って、傾向の違う作品を制作している。話を聞いていても資質は4人4様だ。彼女たちは72~78年に生まれている言わば同世代の作家たちだ。自分たちのやっていること、表現したいことを言葉に置きかえることは苦手のようだが、自分たちが考えていることを造形化して伝えていきたいという意気は伝わってくる。うまく言葉にはできないものの、違和感なく、新しい世代のグラデーションを一つの展覧会としてみせてくれていたように思う。
Towards Utopia
―― New Generation 00
2000年9月30日(土)~10月29日(日)
海岸通ギャラリー・CASO大阪市港区海岸通2-7-23
11:00-19:00(月休)
TEL06-6576-3633
安藤由佳子
Y's life 部分(ヘルメット型のテントのなか)
井谷菜々
trace 20,19,14,15,18(5点)シルクスクリーン 70×95cm
丸尾直子
(左)view 1(2000)キャンヴァスにアクリル 200×300cm (右)view 2(2000)キャンヴァスにアクリル 60×180cm
三浦洋子
遠い気配(2000)パネル、アクリル 各160×200cm
2000-09-30 at 04:54 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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