« 空間体験:[国立国際美術館]への6人のオマージュ | メイン | Vol.21 フジタマ(Fujitama) »
2000/06/19
アート イン ホスピタル展
「病院ってなんだ!?」
1階待合室
前堀浩二「銀座医院待合室の机」
■いま、30歳前後の作家12人が、診療中の病院を会場に、インスタレーションや絵画の展示を行っている。「医療法人湖聖会 銀座医院」は、1972年に銀座菊池病院の名で内科・外科・婦人科などの総合病院として設立、全面改装した健康管理センターにはバブル期をほうふつとさせたり、屋上の物干し台にはかつて入院患者がいた名残が見えるなど、経営の変遷もかいま見られる建物だ。
■待合室には、前堀浩二による、おじいさんをモチーフにした彫刻が閉じこめられたテーブルがある。その前には、湖聖会の老人ホームのポスターが貼ってあり、本来はかくしゃくとしたモデルのいるその彫刻の表情が違って見える。
■桑波田謙は、かつて病室の廊下だった場所にカーテンを吊すインスタレーションを行った。今回はこのような医療道具を使った展示が少ない。階段の手すりと見まがう荒井伸佳の作品をはじめ、さりげなく静かに溶け込んでいるものが多い。
■そのなかで、病院という場の難しさを感じさせられたのは佐藤洋一と若松孝の作品だ。玄関の両脇に貼られた「私は走る」「私は泣く」といった持続する痛みの中に身体の声を聞くような、佐藤のテキストは展示場所、展示状況などの要因から撤去となった。若松の、花をパッキングしたインスタレーションは、植物になにごとかを教わることがあるという経験に基づき、私にも弱った状態のときに覚えがあることだったが、壁の虫ピンが危ないといわれ、話し合いがもたれた。
■屋上の渡邉清介の作品は、それだけでは自立できないソフトな素材を立たせようとする、素材とのやりとりのなかで生まれている。眠りについた人から魂が出ている米原昌郎の作品は、幸福銀行の看板をバックに見ると意味深だ。思えば病院は、科学の先端と生々しい感情の同居する不思議な空間である。進化し続ける医療と幸福は、はたしてイコールなのだろうか?
アート・イン・ホスピタル −生キルタクラミ・加速スル知
2000年6月19日(月)〜30日(金)
銀座医院
東京都中央区銀座7-13-15
(新橋駅より徒歩10分、第一ホテル隣)
9:00〜18:00
6/24・25休 無料
※6月23日(金)17:30〜出品作家によるシンポジウムあり
お問い合わせは
[email protected]までEメールにて。
病院へのお問い合わせはご遠慮ください。
words:白坂ゆり
2階廊下
桑波田謙「カーテンと2つのオブジェ」
この病院には複製絵画や外国の写真が多い。ヴェールの向こうのそれは本当に癒やしになるのか?
2階流し場
若松孝「corresponding−(対応性)」
2階通路
岡田みな子「untitled [GH2000-1/2/3]」
もともとあった虎の置物を型取りし、フロッグ加工(静電植毛)した。もわもわしてかわいらしい。
3階通路
高瀬知淳「るすいの場所」
積み木のような立方体の表面にかすかに広告の印刷が見える。雨ざらしの人工物に土がたまりコケが生えるような、人工物が自然のなかに受け入れられているイメージに安らぐ
屋上
米原昌郎「Death of S/A」
2000-06-19 at 09:42 午後 in 展覧会レポート | Permalink
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d015432c74c3a970c
Listed below are links to weblogs that reference アート イン ホスピタル展: