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1999/12/16
Vol.17 岡本光博(Mitsuhiro Okamoto)
岡本は90年から、彼の中の問題意識として浮上してきた6つの要素をテーマに制作している。作品のタイトルの冒頭にも、整理番号のように分類してつけられている「r」「FG」「NS」「ST」「e」「W」。それらは、r=自然・情報・宗教を問う作品群、FG=西洋の視点からみた日本の美やイメージの検証、NS=アジアの視点からみた日本の体質やイメージの検証、ST=彼自身の霊体験を元にした作品群、e=彼自身の性体験を元にした作品群、W=言葉の検証から伝達の構造までを多角的に分析。また美術作品におけるユーモアの限界も検証する、という内容に分かれる。2年ほど前に、高木哲とのユニット・オメガトラブルを結成、パフォーマンス的な作品にもチャレンジしてる。 マジョリティーを向こうにまわすような批評性をもった表現のなかにも、笑いのセンスが光っている。彼こそ世紀末的アーティストかもしれない 。
●岡本さんの創作の原点にあるものを教えて下さい。
■他の人にはない霊体験を作品化していこうとしていることや、エロチシズムや笑いだと思います。ぼく自身の個性を出すには、これらがもっとも象徴的に表現できるものだと思います。大学は教育学部の美術科に籍をおいていたのですが、文部省が決めた学校教育のカリキュラムを、教員になったときに遂行するためのシステムにそった課題しか出されない。少しでも、答えがそれてしまっては、許されなかった。大学には早い時期に絶望していました。そんななかでも、村岡三郎先生や鴫剛先生が研究室におられたことで救われたところは大きいと思ってます。いろいろな抑圧があった。でも、その抑圧を問い直し考える機会ができ、作品につながっていったんです。課題はほとんどやらなかったけど、作品はつくり続けていました。ぼくが通った滋賀大は、小さいけれど総合大学だったので、美術のなかだけで、美術を考えていかなくてもよい環境にありました。生物学の先生にも、家政学の先生にも、ぼくの作品制作に随分と協力してもらいました。
●大学院修了後、すぐニューヨークに行かれましたが、理由があるのでしょうか?
■フジヤマゲイシャ・シリーズを、展開したかったんです。“西洋の視点からみた日本の美やイメージの検証”というテーマについては、日本でやるより、アメリカに行き、現地に暮らしている人々の価値観を知ることが近道のように思いました。日本文化を理解するための入門書等の表紙を集めた作品があります。文字は全部“鏡文字”にしています。これには、西洋という鏡に映し出された日本文化という意味もこめています。日本では、描こうと思ったこともなかった「ぺこちゃん」などを自然に描けた。
ただ、実際に暮らしはじめると、むしろ他のことに興味が移ってしまったことも確かです。
●帰国の理由は、目的が達成できたからですか?
■いいえ、家族の健康が理由です。でも、あれ以上いても、あまり変わらなかったかもしれないし、これはこれでよかったと思っています。
●CCA北九州(http://cca-kitakyuhu.org/)に研究生として滞在しましたよね。
■日本に帰国した時期に、同じタイミングでCCAが出来たので、滞在することになりました。とにかく、ヨーロッパからアーティストや評論家など、美術関係の大御所が日本へ着て、彼らと一緒に過ごせるということが魅力的でした。オメガトラブルというユニットを一緒に組んでいる高木さんもCCA時代の友人です。話しをしているうちに、日本の美術界での挫折や疑問や変えていきたいことなど、共通する意見を持った人だったことがわかって、一緒に活動をすることにしました。
●岡本さんの作品は、どの作品をとっても、とても戦略的なプレゼンテーションのしかただと思うのですが。
■純粋に表現していきたいものを、ストレートに出す方法について考えてはいます。でも、それを単純にむき出しにしてしまっても、他者には伝わらないと思います。だから、分析してみてからつくる。それがそんなふうに見えてしまうのかもしれません。
アートとして何が出来るのかに、いまは興味があります。商業的なものを気にせずに、アートにしか出来ないことをやりたい。それは無駄と人からは言われるものかもしれないが、もうぼく自身作品を売ることには興味がないので、そういうこととは関係なく、スケールの大きなものを人に提示できるようにしたいと思っています。
●好きなアーティストなどおられますか?
■ヴィト・アコンチとデニス・オッペンハイムです。エネルギーが感じられる。ああいう作家性をもったアーティストって少ないと思うんです。
●これからやっていきたいことなどあれば聞かせて下さい。
■やりたいことは沢山あります。いまも実際にはかたちにしていないプランがあるし。学生時代に幾度となくまわりから、ぼくの作品をオナニーといっしょだと云われていた。アートの最低条件として、公にさらさなければ意味がなくて、自慰と云われても仕方ない。例えば、計算していったうえに近代化が成立したけれど、この近代化された世の中では、一つたががはずれると、すべてが脆く崩れてしまうじゃないですか。自分のやりたいことを最大限にみせていくことをしたいです。日常生活のなかでぶつかった問題のなかで、好き嫌いいずれのベクトルであっても、強くひっかかってきたものを分析していくことに意味を感じます。
岡本光博展
[Sports/Sex/Screen]
1999年12月16日~28日
複眼ギャラリー(大阪)
水曜休廊
tel.06-6253-3566
words:原久子
NS#129「愛のかたち/Love Form」1998
ピクニックシート,弁当箱,キャンバスにプリント
NS#109「日本画22/The portrait of contemporary Japan 22」1998
キャンバスにカシュー,アクリル,サウンドシステム
NS#162「日本画95/The portrait of contemporary Japan 95」1999
キャンバス,壁面にアクリル
W#61「i Fish」1999
透明ゴム,モーター,サウンドシステム
W#52「coffee break 1」1998
ビデオテープ:7min.
岡本光博
(Mitsuhiro Okamoto)
1968年 滋賀県生まれ
1994年 滋賀大学大学院教育学修了
1994~96年 ニューヨークに滞在、制作
1997~99年5月 CCA北九州にて、研究、制作
個展
1990年 「無きにしも有らずんばやむを得ず」
ギャラリー射手座(京都)
1991年 「人面譜」
アート・オブ・トリコロール(大阪)
1992年 「FACE YOU ! 」ヴォイス・ギャラリー(京都)
1993年 「有題」秋山画廊(東京)
1994年 「十年再現」地蔵院・千本ゑんま堂(京都)
1996年 「FUJIYAMA GEISHA series」京都市四条ギャラリー
「多元的文化主義の肖像」CITY GALLERY I.M(大阪)
1997年 「HINOMARA」ギャラリーココ(京都)
「Goshinei」ストリートギャラリー(神戸)
「Japanese Minimal Painting」ストリートギャラリー(神戸)
1998年 「日本画」MOMAコンテンポラリー(福岡)
「Fenochio !」ギャラリーココ(京都)
1999年 「Mirror/Painting 1991-1999」MOMAコンテンポラリー(福岡)
「Sports/Sex/Screen」複眼ギャラリー(大阪)
その他グループ展、舞台美術など多数に参加
1999-12-16 at 08:33 午後 in アーティスト・ヴォイス | Permalink
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コメント
岡本光博のHP見つけました。
投稿情報: shio | 2005/04/04 0:49:31