« 「美育――創造と継承」展 | メイン | デミアン・ハーストの「遊べる」作品集 »
1999/12/13
今道子展
「美に隠されたヌメっと感」
■今道子の作品を初めて見たのはコハダでつくられたブラジャーの写真だった。何枚ものコハダの切り身を使って立体裁断でカップ部分がつくられていて、もちろんストラップもコハダ。銀色にきらめく美しい彫刻だった。実際、このブラは素材が魚だけに着心地を試すのはちょっと…だが、視覚的には生々しさよりも美しさの方が数段うわ手である。以上は、今さんの写真を見た時の印象なのだが、彼女の個展の開催を知って銀座の画廊を訪れた。
■今道子さんは、一貫して魚介類で使った下着や帽子、洋服を写している。なんたって「生もの」だから鮮度が勝負になる。今回、発表していたのは、サヨリでデコレーションした帽子やバラを飾ったブーツといったオブジェ的なものと、彫刻的な胸像など身体的なもの、があった。試しに「鴨+太刀魚+少女」の素材を解説しよう。少女の耳の部分から鴨の頭部が対照的に首をもたげ、肩から魚の頭部が飛び出し、顔の皮膚はイカ、頭のてっぺんには巨大海老のおカシラという構成。造形的にはかなり凝っているが、なんだか妙なおかしさが漂う。少女の目、鴨の目、すべてに太刀魚の目玉を使っているそうだ。モノクロフォトで切り取られた時の止まった世界の裏には、すごく生々しい作業があるはずだが、それをみじんも感じさせない。沈着冷静な今さんだから、きわめてクールにコトをすすめていると思われるが、魚に触ることすら抵抗のある私にはたぶんできないことである。
■ちょっとクラっときたのは、男性モデルが写っていた「Tシャツ+Man」という作品である。白いTシャツを着用してファッションフォトを意識した上半身の構図。Tシャツにはいくつものスリットが入っていて、そこから無数の魚が顔をのぞかせている。ちょっと遠目にはポップな魚柄のTシャツに見えるかも。でもそれはまぎれもなく本物の魚たちが柄と化したものだ。少しもイヤじゃなさそうな凛とした彼のすごさ、死んでなお美しく光っている魚たち、そしてアイデアの遂行人である今さんの美的センス、素敵すぎます。
■死んだ魚の運命は食卓に上がることばかりじゃない、もうひとつの綺麗な運命もあるってこと? いやいや、そんな俗っぽい話を吹き飛ばしてしまうくらい、静謐で美しい世界なんだから本当に。
1999年12月13日(月)〜12月25日(土)
巷房
東京都中央区銀座1-9-8奥野ビル3F
TEL 03-3567-8727
12:00〜19:00(25日〜17:00)
日休
入場無料
「鴨+太刀魚+少女」(部分)すごいインパクト!。
「Tシャツ+Man」どんなヌメっと感だか気になる
会場風景
「イナダ+如雨霧+男」見ればみるほど発見が…
「メロン+少女」カラー写真は2点のみ出品されていた
1999-12-13 at 04:15 午後 in 展覧会レポート | Permalink
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d01538ef40b3d970b
Listed below are links to weblogs that reference 今道子展: