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1999/09/27

GAW展パート1 路地から路地へ・新宿ゴールデン街

「不夜城を舞台にした珍イベント」


■美術館や画廊以外のスペースで、展覧会が開催されること自体、そう珍しいことではない。過去には、学校やお屋敷をはじめ、クラブ、ブティック、路上…を会場とした展覧会があったからだ。それにしても!である。銀座の画廊で入手した1枚の案内チラシを見て驚いた。あの「新宿ゴールデン街」で展覧会!? プンプンと怪しげな臭いを放つ酒場で、アート展なんてちょっと無謀すぎやしない?

■ゴールデン街とは、新宿・花園神社の西に位置する飲み屋街のこと。その歴史は古く、老舗となると40年以上営業を続けていて、現在約150軒近い店舗があるらしい。昭和30〜50年代に隆盛をきわめ、作家や音楽家、ジャーナリストらが足繁く通い、飲み明かした場所であり、現在活躍中の文化人たちの「心の古巣」的な存在といえる。お酒の苦手な私も、実は何度か連れられて、ゴールデン街の某店に足を運んだことがある。店の前に椅子を置き、客引きをしているおばちゃんの冷たい視線を感じながら、ネオンきらめくバラックな飲み屋街の空気を楽しんだ。

■とにかく、そんな異空間で、アート展をやっているのだ。参加アーティスト約40名。展示会場となった飲み屋20件。おまけに細い路地の間にも創意工夫ある展示がされている。等身大の立像を人と見まちがってドキっとしたり、写真の小さなキューブをいくつも壁面に接着した作品があったり、路地巡りは楽しさ発見の連続である。お次は店内展示を見てみよう。やはり閉じられた空間であり、入りにくいのは事実。おそるおそる扉を開け、「すみません、作品見てもいいですか?」と勇気のひとこと。どの店も、カウンター6〜7席で満席というちっちゃな空間である。そこに、絵画や写真、オブジェが並んでいるわけだが、文化系人間のたまり場の店には、もともと演劇や映画のポスターが天井まで貼りまくってある。そのため作品がとけ込みすぎてわかりにくかったりしたが、お店の人が「これとこれが作品」と親切に教えてくれたので良かった。男女の陰部の立体を展示していた店は、さらに有料で秘密部屋(1000円)も覗けるとのことだったが、さすがにそれは遠慮した。

■タイトルの「GAW」はGOLDEN GAI ART WAVESの略。同展は新聞、TVへ紹介されたこともあり、けっこう多くの人が訪れていた。とても楽しく、オリエンテーリング的に鑑賞したが、ふと「同じ作品を白い壁の展示室で見たら、こんなに感動しなかっただろうな」と思った。場所と作品のマッチングがこのアート展の趣旨ならば、大成功だろう。少なからず、見た人の心が「波立った」と思っている。

1999年9月27日(月)〜10月10日(日)
新宿ゴールデン街
新宿区歌舞伎町1-1
入場無料

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「明るい」というフレーズが光ってる!

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最終日、大木道雄さんのパフォーマンスを目撃した

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事務局でもある「久絽」店内。 壁一面に展示された森山大道さんの写真が圧巻

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狭い路地裏にも作品展示があり、ちょっと探検気分

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左は「ことじ」店内に展示されていた佐野文二郎氏のユニークな木彫(この日は外にあった)右は鈴木貴博氏の作品「生きろ丼」を販売していた「しの」。ちなみに「生きろ丼」は、ほかほかの白御飯に梅干しをのせたもの

1999-09-27 at 10:59 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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