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1999/05/15
ヴァネッサ・ビークロフト展
「ものをかたちづくる軌跡」
会場に合わせてつくられた大きなドゥローイング作品の人物の姿や色、線などに、彼女の感覚が見てとれる
■今年の3月に東京・表参道のスパイラルホールにおいて、ちょっと風変わりなパフォーマンスが行われていた。1969年イタリアに生まれた女性アーティスト、ヴァネッサ・ビークロフトのその「作品」は、事前に募集して選んだ女性モデルを、裸であるいは下着姿のまま4、5時間ほどじっと立たせたままにしておく、というもの。観客は少し距離をおいた場所から彼女達をただ眺めるだけであった。
■ビークロフトはモデルを使ったパフォーマンスを海外でも行っており、ドイツでは全員裸でのパフォーマンスだった。僕も彼女のそういった作品を実際に見たことがなかったからというのもあったけれど、パフォーマンスの写真や記事を見ても、いまいち彼女の関心事がなんであるのか、本当のことを言えばよくわかっていなかったんだと思う。
■そんなときに、彼女のドゥローイング作品展を目にすることができた。高い天井の展示スペースには、3メートル程のキャンヴァスに描かれた作品が5点並べられていた。反対側のカベには小さなドゥローイング作品がいくつも並べられている。パフォーマンス作品とはまったく違うアプローチに思えるような、さりげない線と単調だけど目に残る色調で描かれたこのドゥローイングには、彼女が何をどう捉えようとしているのか、どう表現しようとしているのか、のヒントがたくさん隠されていたように思う。
■パフォーマンスは一瞬の「出来事」であって、その時間が膨らんでいくというよりは経過していくもののように僕は感じる。でもドゥローイングになると、僕は時間をそこで対話するために使うことができて、通りがかりの出来事ではなく、立ち止まって膨らんでいく瞬間が生まれてくる。僕にとっては、このドゥローイング作品のシンプルな力強さこそが、とても心地よかったのかもしれない。
ヴァネッサ・ビークロフト展
1999年5月15日(土)—8月7日(土)
galerie deux
東京都目黒区柿の木坂2-10-17
tel.03-3717-0020
11:00〜18:00 日月祝休
words:桑原勳
作品の部分
1994年頃の小さなドゥローイング作品は、今日の彼女の原点が見え隠れしているようでよかった
会場風景。とても広いスペースにしっくりくる大きさの作品だ
海外での、モデルを使った裸のパフォーマンスの写真作品
1999-05-15 at 09:04 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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