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2009/09/20
ニューヨーク市立大学(CUNY)大学院センター「Silent Pictures」
NYから塩崎浩子さんのレポートです。
吹き出しのないマンガ
もしもマンガに「せりふ」がなかったら? ニューヨーク市立大学(CUNY)大学院センター付属のジェームス・ギャラリーで始まった「Silent Pictures」は、そんな言葉のない、あるいは抽象的なマンガを集めた一風変わった展覧会である。
Woodcut image from David N. Holzman's In the Gulf, 1989
展示は3つのパートからなる。最初のパートはピューリツァー賞を受賞したアーティスト、作家のArt Spiegelman氏のコレクションから、David N. HolzmanやFrans Masereelなどの、主に1930年代に作られた「言葉のないマンガ」の原画や原本が展示されている。木版、黒白2色刷りによる太く荒々しい描線が、哀しみや怒り、喜びや驚きといった人間の根源的な感情を強く率直に伝えている。
Andrei Molotiu, from The Panic, 2006
第2のパートでは、美術史家でマンガ家でもあるAndrei Molotiu氏が調査研究、編集をし、先頃出版した『Abstract Comics』( Fantagraphics Books刊) に収められた作品を展示している。本のタイトル通り、カンディンスキーのような抽象、様々な色がにじんで混じりあう水彩画、色のモザイクで構成された絵、画面からはみださんばかりの無数の黒い線など、一見マンガには見えない絵が並ぶ。それでもそこにはさまざまに画面を区切る「コマ」があり、一つのコマから次のコマへ、イメージや色、あるいは時間の「連続する流れ」がある。四角の中に入れられた抽象的なかたちが画面から画面へと運動していくのだ。
最後のパート「Comic-Film-Strips」ではその運動を映像で表現した作品が並ぶ。William Kentridgeの初期35ミリ映像作品(1985年)やフィルムに直接絵を書いて撮影した作品など、せりふのないアニメーション映画を紹介。せりふがなくても、起承転結があったりオチがあったり、丸いかたちが人間の頭に見えたり、まさに「言葉のないマンガ」。言葉がないゆえに、読み手はより自由にそこからドラマやストーリーをつむぎだすことができるのかも知れない。
Jeff Zenick《Because》 page 3, 1992, ink on paper, 9" x 6", collection of the artist
「Silent Pictures」は10月11日まで開催。
ニューヨーク市立大学(CUNY)大学院センタージェームス・ギャラリー
Words: 塩崎浩子
2009-09-20 at 06:01 午後 in ワールド・レポート | Permalink
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コメント
ユニークなコンセプトのマンガですね!
投稿情報: 小学校受験 | 2009/11/18 15:46:05