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2008/11/23
モーガン・ライブラリー&ミュージアム「Drawing Babar: Early Drafts and Watercolors」
ぞうのババール誕生の秘密
NYから、塩崎浩子さんのレポートです。
緑色のスーツに黄金色のクラウン、立って歩く人間そっくりのぞう。マンハッタンのミッドタウンにあるモーガン・ライブラリー&ミュージアムで開催中の展覧会「Drawing Babar: Early Drafts and Watercolors」では、日本でも有名な絵本『ぞうのババール』の直筆のドローイングや水彩画を展示し、その創作の秘密に迫っている。
Jean de Brunhoff (1899–1937)《The elephants carried Babar, Arthur, and Celeste in triumph.》Histoire de Babar, le petit éléphant (The Story of Babar), 1931 Watercolor 14 1/2 x 10 3/8 in. (37 x 26.5 cm) The Morgan Library & Museum Gift of Laurent, Mathieu, and Thierry de Brunhoff, and purchased with the assistance of The Florence Gould Foundation and the Acquisitions Fund, Fellows Endowment Fund, Gordon N. Ray Fund, and Heineman Fund, 2004.
フランス生まれの「ぞうのババール」が、親と子の2代にわたって描き継がれていることを知っている人はあまりいないのではないだろうか。原作者は、ともに 画家から絵本作家になったジャン・ド・ブリュノフ(1899-1937)と、息子のロラン・ド・ブリュノフ(1925-)。展示は2部屋に分かれ、それぞ れが手掛けた最初の絵本、ジャン・ド・ブリュノフの『Histoire de Babar, le petit éléphant」(ぞうのババール) 』(1931年出版)と、ロラン・ド・ブリュノフの『Babar et ce coquin d’Arthur(ババールといたずらアルチュール)』(1946年出版)をテーマに、手描きの草稿、スケッチ、水彩画など170点以上の資料が展示され ている。
展示には単なる原画展ではない工夫が見られた。絵本のストーリーに沿って1ページずつ、最初のアイデアスケッチ(鉛筆や水彩によるドローイング)と最終段階の下絵(水彩による精密なもの)を並べて見せ、どのようにして1冊の本を作り上げていったのか、1枚1枚ページをめくるようにその創作プロセスを紹介している。初めのアイデアがまるで違うものに変わっていたり、マティスの作品を思わせる大胆で色鮮やかなドローイングがあったり。さらに父と息子とで創作方法に違いがあるのが分かって面白い。
Jean de Brunhoff (1899–1937) Histoire de Babar, le petit éléphant (The Story of Babar), 1931 Final watercolor for the front cover 14 1/8 x 10 3/8 in. (36 x 26.5 cm) The Morgan Library & Museum Gift of Laurent, Mathieu, and Thierry de Brunhoff, and purchased with the assistance of The Florence Gould Foundation and the Acquisitions Fund, Fellows Endowment Fund, Gordon N. Ray Fund, and Heineman Fund,2004.
父ジャンの作品は、まず鉛筆によるラフスケッチから始まり、エレガントな手描き文字をその絵と調和させながら絵とテキストを同時に仕上げていき、最終段階でようやく水彩の色を付ける。レイアウトやストーリーは時に大幅に変更されていて、彼が原作者、イラストレーター、デザイナー、そして編集者の仕事も兼ねていたことが分かる。54ページからなる表紙付きの小さなイラストブック(マケット)には、出来上がった本とは別のもう一つのババールの世界がある。最初は名前もなかった赤ちゃんぞうがババールになる、その誕生の物語である。
一方息子のロランの作品は、下描きの段階から水彩を使って大づかみに構図や色を決めていき、テキストとは別に絵を完成させてから、最後にテキストと絵を組み合わせるやり方だ。父に比べて登場人物(動物)が増えて説明的になり、筆使いや色合いはソフト。力強くがっちりした初代ババールと比べるとぞうたちの顔立ちは面長で優しく、中性的な印象がある。
Laurent de Brunhoff (b. 1925)《Babar and Arthur Reunite.》Babar et ce coquin d’Arthur (Babar’s Cousin: That Rascal Arthur), 1946 Final watercolor 14 5/8 x 21 7/8 in. (37 x 55.4 cm) The Morgan Library & Museum Gift of Laurent de Brunhoff, 2004.
もう一つの発見はフランス語版と英語版絵本との違い。フランス語版の方が判型が大きく、活字は手描き文字風、色はより鮮やかで美しい。フランス語版の初期の絵本の初版本がガラスケースに収められていた。絵本としてはかなり大きめなのだが、その大きさについて当時、「子どもが床に座って読むのに本がきちんと立つよう背の部分はしっかりしていて、そして家庭教師のようなやっかいな大人が近くに来た時に表紙の後ろに隠れられるぐらい大きい」と評されたそうだ。絵本の本質を理解して、子どもたちの視線で本を作っていた彼らの作品が、今も世界中で愛され続けている理由が分かった気がした。
「Drawing Babar: Early Drafts and Watercolors」はモーガン・ライブラリー&ミュージアムで2009年1月4日まで開催。
Words: 塩崎浩子
2008-11-23 at 01:00 午前 in ワールド・レポート | Permalink
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