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2007/04/23

台湾の現代アート賞

台湾から岩切みおさんの今月のレポートです。

Dsc01753 台湾にはさまざまな芸術賞があるが、現代アートの分野では、「台北美術賞」と「台新芸術賞」のふたつが大きな存在感を占めている。そのうちの「台新芸術賞」の視覚芸術類大賞に、今年は、彭弘智(ポン・ホンツー)が選ばれた。2002年の福岡トリエンナーレにも参加した、犬をモチーフとする作家だ。

彭弘智、台新芸術賞受賞の瞬間。右は昨年の受賞者、湯皇珍(タン・ホァンジェン)

まず、このふたつの賞についてご紹介しよう。台北芸術賞(以下台北賞)のほうは、台北市主催で、毎年開催。台北市立美術館にて入選作品の展覧会が行われ、10数名の入選作品から5名以内の台北賞受賞者が選ばれる。1996年に、前身である台北市美展(1973年に創始)から「台北賞」と改名、何度かにわたる名前や分類の修正を経て、オールジャンルという現在の形になったのが2001年。賞金は税込で20万元(日本円で70万円程度)と少ないが、応募者数は年々増えており、若手の登竜門としての地位は、すでに不動のものだ。入選、受賞したアーティストが必ず大物になるかというと、もちろんそうとも限らない。でも、台湾を代表する現代アーティストたちの経歴を調べてみると、かなり高い確率で受賞または入選経験があるのが面白い。10人足らずの審査員団には、芸大教授や批評家とともに現在活躍中の中堅アーティストたちー王俊傑(ワン・ジュンジエ)や姚瑞中(ヤオ・レイツォン)などーが必ず入っており、学閥などにとらわれない若いセンスが賞に反映されている。審査方式は、数百点に全部目を通すやりかた。数秒で飛ばされるものもあるが、この作品は、と審査員の誰かが魅力を感じると、そこで止まって全員でじっくり検討するとのことだ。

もうひとつは、台新銀行藝術文化基金会主催による「台新芸術賞」(以下台新賞)。こちらの歴史は比較的浅く、今年でようやく5回目。視覚芸術類と公演芸術類に分かれており、賞金は各100万元。審査員特別賞もあり、こちらには30万元が贈られる。審査方式はもう少しこみいっており、視覚芸術類では、まず国内のアート・ジャーナリストらによって、前年度で良かったと思われる展覧会がノミネートされる。その後、美術館館長やシニア・キュレーターたちで構成される二次審査委員会が、最終ノミネーションを絞り込んでいく。最終審査には、国内外のキュレーターや批評家たちが招かれ、一週間ほどの缶詰状態で、審議が行われる。日本からも過去に、キュレーターの後小路雅弘、長谷川祐子、南嶌宏らが招かれており、今年は黒田雷児が審査員を務めた。

Dsc00231_8 審査材料となるのは記録ビデオや、前年の展覧会をミニチュア化した仮設の展覧会。台湾芸術家に対する功労賞的な要素のある同賞では、評判の展覧会であっても、参加作家の半数以上が外国人アーティストだと外されてしまうので、必ずしもその年に見ることの出来た一番良い作品がノミネートされるとは限らず、この点はやや残念に思われる。

視覚芸術類大賞を受賞した彭弘智のこの個展(伊通公園ギャラリー)では、彼が一貫して取り組んでいる、人為的にアレンジした犬の行動を写したビデオ作品、床一面に敷き詰められた魂を抜いた後の神様の木像、魂を入れてあるキリストの半身像などを展示した。深い哲学というようなものは感じられないが、ふっと笑いを誘われる彼の作品には、ウィットに満ちた鋭さがあり、また台湾の多くの作家に共通する、刹那的な瞬間の美があるように思う。受賞には納得させられるものがあった。

昨年11月の彭弘智個展より

台北美術賞
台新芸術賞

words:岩切みお

 

2007-04-23 at 12:27 午前 in ワールド・レポート | Permalink

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