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2006/02/02

須田国太郎展/額田宣彦 ― 追加

「いい絵と感じる瞬間」

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須田国太郎「夏花」(左)「秋草」(右)額田宣彦「jingle-gym(3-1)」「jingle-gym(3-2)」「jingle-gym(3-3)」

 展覧会を見ていて時として感じるオーラ。「いい絵だな」と思う瞬間である。自分でもその決め手が何なのか言葉では説明できないのだが、どこかで確信がある。

 東京国立近代美術館で開催されている須田国太郎展で何点かの作品の前でそう思った。1920年代に渡欧して西洋画を学び、絵画が西洋と東洋、異なるベクトルで発展してきたことに疑問を感じ、日本人的な感性で油絵を模索し続けた画家である。

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須田国太郎「書斎」

 辺境の風景、花や動物など、ごくありふれたテーマながら、視線を釘づけにするのは、東洋の精神を取り込むかのごとく葛藤した痕跡がキャンバス上で見てとれるからだ。特に草花を描いたものが魅力的に映った。小品を集めた最後のコーナーは、粒よりな作品が多く、作品の迫力と大きさについて考えさせられた。久しぶりの回顧展だそうだが、こういう作家の仕事に触れることもとても大事だと思う。

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額田宣彦「center(05-3)」(左)「center(05-1)」(右)

 ところ変わって京橋のギャラリー。縦・横・斜めの線でジャングルジムのような造形が几帳面に描かれた画面が並んでいる。だが線には歪みがあり、これらがフリーハンドであることに気づく。
 額田宣彦の制作コンセプトはフリーハンドによる描線。軌跡は下書きなく、直にキャンバスに描かれていく。「描くシステムが確立すればするほど自由になれる」という逆説のような考えを持ち、今回は支持体の麻布の布目に沿ってラインが引かれている。フツウなら枷になりそうな単調かつオートマチックな行為こそが、この作家の創造世界を広げていくらしい。
 線と面の鮮やかなコントラストもさることながら、直線だけで平面空間を膨らませる画面の構成力には目を見張るものがある。感情を抑制した須田国太郎と対照的な絵。でもずっと眺めていたい絵。ギャラリーには大小の新作が並んでいて、すがすがしい空間になっている。

●須田国太郎展
東京国立近代美術館
2006年1月13日(金)~3月5日(日)
月祝休
10:00~17:00(金曜~20:00)入館は閉館30分前まで
入場:一般830円、大学生450円、高校生250円、小・中学生無料
03-5777-8600(ハローダイヤル)

●額田宣彦 ― 追加
ギャルリー東京ユマニテ
2006年1月16日(月)~2月4日(土)
日休
10:30~18:30
入場無料
03-3562-1305

words:斉藤博美

2006-02-02 at 01:58 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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» 「須田国太郎展」 from 弐代目・青い日記帳
東京国立近代美術館で開催中の 「須田国太郎展」に行って来ました。 小さい頃お絵描きに使ったクレヨンに「肌色」ってありましたよね。 (今はそうよばないのかな) その「肌色」に近い「ピンク」と「黒」がとても強く印象を与える 作品が多くありました。(「黒豹」とか) キーワードは「肌色ピンク」&「黒」です。 ただしカタログには色が上手いこと出ていません。 Webで観ても同じです。それだけ絶妙な色合いです。 会場は?〜?までのセクションに大きく分けられていました。 ... [続きを読む]

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