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2006/01/05

牛島達治展 好評につき臨時オープン!

Ushijima_tatsujiUshijima_tatsuji1モーター音が少し調子外れに歌いながら、せっせと粘土をこねる装置。昨年ラストを飾った牛島達治展が年を明けてもう一度展示されます。

2006年1月9日(月祝)11(水)12日(木)12:00−19:00
東京都中央区銀座1-9-8奥野ビル511号室
a piece of space APS
TEL.03-3567-4330

牛島逹治は「装置」と呼ぶ動く彫刻をつくる。人がピンセットで紙粘土をひとつまみし丸めた「たま」を円板と円板の間にはさみこむと、円板がモーターで回転をはじめる。円板がカタカタしながらシュルシュル加速し始め、円板の縁で粘土が削られて筋がつく。回転がクライマックスに達したかと思うとポーンとたまが床に放られた。禅の修業で、何か意味を説明されるのではなく、スリッパでぽーんと頭を弾かれて「はい、出た」と言われているみたいだ。この意味も目的もない行為を繰り返している。ひとつ放ると再びスタンバイを始め、また粘土を差し込むと再び回転を始める。

80年代後半から90年代、もくもくと土を削り出し、土を耕すそばから土を固めることをひたすら繰り返すといった「無用の機械」で注目された。彫刻から動く装置に移行した最初の動機は、石の音が聴きたかったからだという。ここしばらく発表をしていなかったが、先月の「ランドマークプロジェクト」で、110坪の巨大空間に約240メートルのロープをわたして滑車の回転により1ノットの速さでふたつの銀バケツが土を運ぶインスタレーションで久々にマウンドに上がり、詩のようなベテランの投球を見せた。さらに今回のポテンヒットを繰り返すような装置もおもしろい。

私は「用のないことをする」「役に立たない」ことの良さは、美術を見始めた当初はわからなかった。ナンセンスやムダな笑いであればお腹を抱えてわかるのだが、退屈でいいということが高級で難しかった。しかし声高でもなく媚もなく淡々とした無為な光景に次第に胸がすくようになる。今回のマシンは特に、ストイックに精緻を極めるのではなく、多少意志を持って人間と共同作業をしているかのように、たまに気の向くままみたいな不埒な動きをする。落ちる場所もそのときどきに違い、「はいはい、ごめんなさいね」と割り込んでいったり、「どけどけ」とばかりに元あったものを蹴散らしたり、すきまめがけてきれいにおさまったり……。作家もスタッフも交えて5人に注目されるなか、最高のフォームとバランスで回転を決めたラスト、コードにズリッとはさまれるようにしてポトンとたまが落ちた。なかなか達者なマシンだ。

これまで自力で走ることばかり考えてきたけれど、(仕事を)動力に乗せることも考えよう。


words:白坂ゆり

2006-01-05 at 12:56 午前 in 展覧会レポート | Permalink

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コメント

ダミアン・ハーストも「スピン」やってるなあ。循環、回転から外へはじき出す力。キーワードは遠心力でしょうか。

http://www.tagboat.com/contents/gallery/detail.jsp?wid=IGA

投稿情報: 白 | 2006/01/18 13:00:25