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2005/03/20

吉田和貴展「静止している様子な世界のための」

「ピンクのスナップ」

yoshida3yoshida
「静止している様子な世界のための」
より

 ギャラリー アーキペラゴは、写真家4人で運営しているスペースだ。そのうちの一人の原田晋さんからDMをいただいて行ってきました。今の展示、思わず半笑いになってしまう。

 袋とじ劇画からエッチな顔のコマを引用し、自分の撮影した風景などの写真を重ねてピンクの紙にプリントアウトしている。それらが壁に蛍光色のピンでささっと留められたみたいな展示だ。3日間の展覧会なので、すばやく通り過ぎる感じに合わせたという。
 写真には、町内会の観光写真みたいなスナップから、桜の木、窓から眺める海などがあり、劇画と重ねられ、典型的なものとプライベートっぽいものとの間を行き来しているように感じられた。さわやかにもなれば、スロットマシンの間違った組み合わせのように、(無)意識が別の事を引っ張ってしまったようにも見える。
 最初は、観光写真との組み合わせがのどかで笑ってしまった。他の風景の作品では、石井隆などの劇画(映画)にある叙情的な風景描写の記憶に引っ張られて、隠微さやウェット感、あえて漂わせる田舎くささなどを連想したのだが、最近はそのような前後に物語のある劇画は減り、実用的(?)な部分のみを職人のように描いたものが多いのだそうだ。
 劇画はそれぞれ異なる作者のもので、よく見ると違っているのだが、「いわゆる作家性を消して、同じ人が描いているようにも見える」とも言う。吉田の手でも、劇画をそのまま写すのではなく、解像度の荒くなったモザイクっぽい感じや薄く遠のくみたいな処理をしている。現代美術では、川原に落ちていたあるいはビラ張りみたいな、あえてラフな汚い感じに見せることもあるが、その手のイヤミな感じはない。
 このスカッシュのような3連打も、バカなことやってるなあと清々しい感じだ。(おそらく)監禁もののマンガの上の方には、車の助手席の写真がある。これには<誘拐とやがて芽生える愛のはざま>みたいな、ほとんどあり得ない願望シリーズを思い起こすが、現実の事件のようなことに転ぶ者もいれば、こういうカラッと突き抜けたおかしさにも転べるわけで、そういう意味では毒もあるのかと思う。
 しかし、こうして見ると間抜けな顔にも見えるけど、そもそも、この顔があの顔だっていう「記号」って、なにか磨き上げられたものに見えるなあ。なんてまあ、くどくど言う事でもない。どうでもいいかと思わせる具合が秀逸かも。ギャラリー空間で見たときは、妄想と周囲の人へのいらぬ気遣いで頭がごっちゃになったので、みんなでガハハと、あるいは一人でひそかに笑って見るのがいいような。

2005年3月18日(土)〜20日(日)
gallery Archipelago
東京都中央区京橋1-8-11 田口ビル4F
12:00 - 19:00  
月休
TEL.03-3563-0996

吉田和貴、篠昭好パーソナリティーで送るインターネットラジオ。
デジオの宇宙 らじお、か?

words:白坂ゆり

アップするの遅くなってしまってスミマセン。いまから別の展覧会へ。間に合うか!?

2005-03-20 at 02:39 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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