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2003/03/07

直島・家プロジェクト

「アートが佇む家」


art176_04_1「護王神社」拝殿の向こうに本殿があり、ガラスの階段が架かっている


■1997年から着手された直島・家プロジェクトが、昨年10月の「護王神社」をもってようやく完成した。家プロジェクトとは直島(瀬戸内海に浮かぶ小島。人口約3600人)の本村地区の古い建築物やその跡地を使い作家が作品を展開するもので、これまで宮島達男、ジェームズ・タレル、内藤礼が参加、最後は杉本博司の神社をもって完了となった。

■同プロジェクトも直島コンテンポラリーアートミュージアムもまだ訪れたことがなかったが、ようやく行く機会が訪れ、1ヶ月ほど前にツアー参加を申し込んでおいた。高松に宿を取り、朝一番の四国汽船フェリーで約1時間。到着に合わせてバスが出ているので、15分たらずで直島文化村に着く。同じバスに乗り合わせた韓国人2人連れもツアーで一緒になった。

■午前10時にホテルフロント前に集合。参加者はホテル宿泊客が多い模様。バスに乗り込むと運転手兼ガイドさんの説明が始まり、直島がどんなところだか少しわかった気になる。15分程度で本村地区に入り、まず4軒をざっと回りひととおり解説を受け、各人自由に散策となる手順だ。それぞれの家の案内役が来るまで(午前11時)見られない作品もある。

■「角屋(かどや)」だけは案内者がいないそうで、出入り自由だった。築200年の佇まいが持つ空気を感じながら、全面プールとなった座敷部屋を眺める。水中には宮島達男のデジタルカウンターが沈んでいる。125人の町民がそれぞれカウントスピードを決めたという住民巻き込み型作品。土間のガラス窓にもデジタルカウンター。もちろんちゃんと動いている。母屋の右側にある納屋の2階にはデジカンを描いた掛け軸がありニヤけてしまう。

■内藤礼の「ぎんざ」はもとの屋根や柱を活かして再建された建物で、ひとり15分だけ入れるクローズドな空間。中には小さな腰掛け場があり、そこに座って作品と対面する。電灯はなく、下方の隙間からもれる自然光だけが頼りだ。目が慣れてくるとそこに置かれた小さなオブジェたちが見えてくる。

■「南寺(みなみでら)」はもっと暗い空間だ。入るのに壁をつたわりながら進まなければならない。15分から20分くらいで不可視状況から脱する。ジェームズ・タレルの作品を御存知の人なら想像がつくと思うが、光がじわじわと見えてくる静謐な作品だ。昔この地に存在していたという南寺にちなみ、安藤忠雄が設計した落ち着きのある箱家だ。

■そして「護王神社(ごおうじんじゃ)」。江戸時代から祀られてきた神社で、改築にともない本殿、拝殿、地下の石室を杉本博司が設計した。本殿と石室がガラスの階段でつながっていて、右手へ下ったところに石室へ向かう入り口がある。大人ひとりがやっと通れるくらい幅が狭く秘密基地への通路のよう。室内は光を受けたガラス階段が浮かびあがり、入り口へ目をやると絵画のように切り取られた海を臨む風景が見える。

■去年まではツアー方式を取らず自由に散策していたと聞く。そのためひとつのところに人が集中したりとして全部を見学せずに帰ってしまう人もいたらしい。現状のように少人数で実施されるツアーは効率的かつゆっくり見られて参加者としては満足だが、この町の人々がどのくらいこれらの作品を知っているのか少し気になった。ツアーパスを持っていないと建物へ入れないため、いくら住人といえどフリーに見学できないのだ(以前はフリーだったそう)。せっかく町に点在する作品なのに、島の外から来た人がどんなものを目的に来ているのか知られていないのは寂しい気がする。個人的にだが、地域に溶け込むアートプロジェクトというものを模索している最中なので余計にそう感じてしまった。

■護王神社に関しては石室こそ入れないものの拝観はもちろんフリーだ。町の人々はこの物珍しい神社に日常的にお参りしているそうである。家プロジェクトをきっかけに彼らと会話がはずむ日は来るのだろうか。


「直島・家プロジェクト見学ツアー」
直島コンテンポラリーアートミュージアム
香川県香川郡直島町琴弾地
TEL 087-892-2030 FAX 087-892-2259
[email protected]

実施日: 毎週火・金・土・日曜日および祝日
時間: 午前の部/10~13時 午後の部/13~16時
定員: 毎回8名(要予約)
参加費:ひとり1000円(税込。別途、直島文化村の入場券(1000円)が必要)
申込方法: 電話、ファックス、メールにて申込む

words:斎藤博美

art176_04_2拝殿の下に設置された石室への通路は右手の下方にある


art176_04_3「ぎんざ」はひとりずつしか入れない。鍵をあけてもらって入るところ


art176_04_4「角屋」は宮島達男の作品づくし


art176_04_5スリガラスの窓にもデジタルカウンター。数字がよく見えるのは早朝だそう


art176_04_6本村にはこの「角屋」のような様相の建物がまだまだ現存している


art176_04_7「南寺」安藤忠雄とジェームズ・タレルの空間

2003-03-07 at 11:59 午前 in 展覧会レポート | Permalink

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» 家プロジェクト from Gaze and Review
於  直島本村地区 直島の独特の町並みに、現代美術。作品は、家や寺、神社の中にある。 家屋ひとつに、一人のアーティスト、一人の建築家が、入り、作品を制作するプロジェクト。見た順番にひとつづつ紹介しよう。 「角屋」 宮島達男 「Sea of Time ’98(時の海 ’98)」(1998年) FRP製のプールに、水がはってあり、そのなかにLEDカウンターが、アトランダム配置された作品。水は循環していて、水面に紋があり、数字が揺らめく。 「Naoshima’s Counter Win... [続きを読む]

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