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1999/06/08
心の旅 ーKEEP MOVINGー展
「美術が誘う旅の行方」
本田一樹作品
■旅が好きな人がいる。旅を面倒くさがる人もいる。旅はわたしたちを日常から開放してくれる。そして、緊張や新鮮な出合いをもたらしてくれる。美術作品との出合いは、私たちの心を旅に誘い出してくれることがある。作品をつくる作家自身の心も、常に揺らぎうつろい、また作品の制作とともに成長していく。それは旅のように。
■無数の星が輝く宇宙の大海原を描いたような幻想的な絵画空間をつくる本田一樹さん。福本武司さんの作品のなかには、これまでの美術の歴史のなかで行われてきたことを、もう一度見つめ直そうとするような、絵画への真摯な姿勢での取組みがみられる。
■「KOKUFUMOBIL」なるシリーズの展開で独自の自動車をつくりだす。二輪車あり。四輪車あり。真っ赤なクルマは外は錆びてボロボロなのに、内部は銀色でピカピカ。そのうえ、内部が冷蔵庫になっている。寒くて長くは乗っていられない。冷蔵庫のなかに入るなんて、めったにないし、冷蔵庫の中から外を眺めることもこれからもあまりないだろう。
■地下室を使った國府さんの作品は、階段の途中に携帯電話がぶら下がっていて、作品をみるためには書かれている番号に電話をかけるように、と指示を受ける。電話をかけるとスイッチがはいる仕掛けになっていて、かけている間は地下にぎっしり敷き詰めた蛍光灯が電磁波を受けて点滅する。誰の電話ともわからない番号をダイヤルするスリルと、事態がにわかに把握できない瞬間。身体と意識がバラバラになっていく不思議な心地よさを。それぞれの出品者がとらえた『心の旅』。
■ハヤシイクマサさんが企画したこの展覧会は、3人のアーティストによるものだが、ぱっとみたところでは共通する点やテーマ性を見い出しにくい。美術館でも、コンセプトやテーマの斬新さを競うような展覧会が昨今の流行りのようだ。展示されるひとつひとつの作品に対する評価と同じくらい、あるときはそれ以上に「企画」そのものが取り沙汰されることがある。『心の旅』は参加アーティストと企画者によって一緒につくりあげられていた。ここでめぐり合わなければ接点がなかったかもしれない作家同志の相互の対話は、アーティスト自身の旅の行方にも影響を与えたかもしれない。
心の旅 ーKEEP MOVINGー
(本田一樹・國府理・福本武司)
1999年6月8日(火)~20日(日)
ギャラリーそわか(京都・東寺東門)
tel.075ー691ー7074
words:原久子
國府理作品「1t車」
福本武司作品
赤いクルマは國府理の「冷蔵庫自動車」、奥左・本田一樹作品、奥右・福本武司作品
1999-06-08 at 08:48 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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