« 福永大介展 9/22まで! | メイン | 隅本大心展 »

2006/09/22

コネクティング・ワールド

Icc01ペーター・フィッシュリ&デヴィッド・ヴァイス《事の次第》より 1987

この展覧会では、ペーター・フィッシュリ&デヴィッド・ヴァイスの1987年の映像作品《事の次第》が見られる。ヴェンダースの映画は《ことの次第》、と多くの人が書いてそうだな。黒いビニール袋がタイヤの上を滑ったり、泡が机の上に広がったり、ガラクタや日用品を組み合わせ、連鎖反応のように次々とことが起きていく。途切れそうで途切れず30分、ドミノ倒しで次へ次へとスイッチが入るみたいにエネルギーが伝播していく。延々見てると楽しい。火はついたりするけれど、すべてが御破算になるような大事件は起きそうで起きない。ただ、環境破壊とか戦争とか世界でことが起きることってこういう仕組みだとも思う。

Ex1Ex02エキソニモ《OBJECT B》2006

これに呼応するようにエキソニモの作品がある。立方体の一面ごとに、コンピュータと電動工具でつくられた3基のオブジェがあり、たとえば工具箱がガタガタとけいれんしたりすると、ゲームのキャラクターが攻撃を始める。ハイテクとローテクが手をつなぎ、シューティングゲームが間の抜けた感じになっているのがいい。観客も闘える。

デニス・オッペンハイムが息子と一緒に上半身裸になり、息子の背中に描いたドローイングを息子が感知して黒板に写すという伝言ゲーム的な映像作品に代表されるように、この展覧会は、ディスコミュニケーションも含むコミュニケーションの豊かさについて見せている。
 で、ひとりの友人は、「静かな作品とコネクトしたいとき、中央で暴れるエキソニモの作品はディスコミュニケーション的な存在なんだけど、そういうノイズも介入して来るのが日常の状態かと思い直した」という。けれど私には、フィッシュリ&ヴァイスやエキソニモのガッチャガッチャ騒がしい、トン吉→チン平→カン太みたいな作品が微笑ましくコミュニケイティブで、説明を読んでPC画面を延々見るようなものに壁を感じちゃってた。いや、理解すれば示唆的な作品なんですよ。毛利悠子+三原聡一郎やロバート・デイヴィス+ウスマン・ハックの音に関する作品は、もっとわかりたいという欲求がある。

つまり、人によって何がコミュニケイティブなのか想像以上に違うんだなあと思った。沈黙の深いコミュニケーションというものもあるし、国や民族が違えばまた異なってくる。そういうなかで、アートに対する解釈や受け取り方にもかなり差異とかずれがあるはずで、アートを介したコミュニケーションをオープンにすることって、そういうリアクションがわんさか出て来ることなんじゃないだろうか。それが日常にフィードバックされて意識し始めると、いかに認識違いのまま会話が流れ、大きな幅のなかで融通のきいたやりとりが行われているか、びっくりし始める。びっくりしても瞬間的には直していけないんだけど。

で、話が飛ぶけれど、もともと世界は鷹揚にできているんだと思う。差異に対して寛容というか。
たとえば、グラビアとか情報として入って来る裸には強迫観念をもってしまうんだけれど、高井戸温泉に浸かっていると、全く千差万別で全然そんなことないんだなあと安心する。ICCみたいなところでも、結局アートは裸の付き合いなんじゃないかなあ。ずいぶん飛んだけど、オッペンハイムも裸なので。

2006年9月15日(金)〜11月26日(日)
NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
10:00〜18:00
月曜休(祝日の場合、翌日)
TEl.0120-144199

words:白坂ゆり

2006-09-22 at 02:53 午前 in 展覧会レポート | Permalink

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d014e88e73f09970d

Listed below are links to weblogs that reference コネクティング・ワールド:

» ナショナルのインパクトドライバー from インパクトドライバー
プロ・玄人向けの電動工具、インパクトドライバー。新型やメーカー商品情報。マキタ、日立、ナショナル、比較の手助けに。 [続きを読む]

トラックバック送信日 2011/06/05 11:46:18

» フィッシュリ&ヴァイス 事の次第 from DVD Check
フィッシュリ&ヴァイス 事の次第 [続きを読む]

トラックバック送信日 2011/06/05 11:46:18

コメント