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2000/03/03
宮島達男展
MEGA DEATH:shout! shout! count!「突破!」
「Mega Death」縦5m、横34m、L.E.D2400個のスケール感! 満天の星空、青い光が映る床 は海のよう。多くの人がずっと、ずっと作品に浸っている
■子供の頃札幌で育った私は、暗くなるまで木登りや川遊びをしては、夜中に持病の喘息を起こすという懲りない子だった。公園では雲梯が好きで何段抜かせるか試していた。まるで手長ザル……。美術館の庭でお転婆をして、縫うほどのケガもした(作品を壊したのではありません)。人形遊びも本も好きだったが、無茶無謀さに憧れていた。新興住宅地でも冒険はできた。親には迷惑をかけたが、いまになって、木登りで次にどこに足をかけるかといった野生児のカンのようなことが、弱気な自分を後押ししてきたようにも思う。
■最近多い、希薄で繊細な作品に深く共感する反面、ワイルドな作品にも無性に出合いたかった。そして「宮島達男展」には、洗練された圧倒的な空間と、粗野で一見ナンセンスな行為の両方があったのだ。
■“洗練”とは、'99年の国際美術展「ヴェネチア・ビエンナーレ」に日本代表として出品した「メガ・デス」というインスタレーション。一面の壁に、異なる速度で1から9までの数字を刻む青いデジタルカウンター(L.E.D)が明滅している。人の人生がそれぞれ違うように……。そして突然バン!と真っ暗闇が訪れる。これは“人為的な大量死”を象徴するが、しばらくするとぽつぽつと数字が点き始める。ショックから、新しい生命への希望へと気持ちが開いていく。
■そして本能的で一見ナンセンスなのは、9から1までの数字をカウントダウンし、0でミルクに顔をつける行為を繰り返すパフォーマンス。一般の人がパフォーマーなのは「死」と向き合う体験は、誰にでも隣り合わせだからだ。滑稽と笑えぬ凄み。私も家で試してみました(それはアブナイ人?)。また、拳で突き破るように、ドリルで壁に数字を描いたドローイングは、かなり野蛮でパンク。ドリフト(浮遊)感に風穴を空けるドリラー宮島は、'60年代にボクシング・ペインティングで時代を殴った篠原有司男のようだ。
■いつか作家の肉体にゼロの日が来ても 、作品は“大きな古時計”のように(以上に)生き続ける。そして誰もが体得できるパフォーマンスは、仏教の以心伝心のように人から人へ渡る。もちろん'57年生まれの宮島さんはまだ若くエネルギッシュだが、“人は「死」に向かって何かを残すために生きる”という実感のもとに立っているように思う。そんな境地に届かない私でも、宮島作品にゼロがないことに、本当に勇気づけられる。そして多くの人がこの展覧会に詰めかけていることに。
宮島達男展 MEGA DEATH:shout! shout! count!
2000年3月3日(金)〜5月14日(日)
東京オペラシティアートギャラリー
東京都新宿区西新宿3-20-2
(京王新線初台駅)
12:00〜20:00(金土〜21:00、入館は30分前まで)
月休 一般900円、大高700円、中小500円
TEL.03(5353)0756
*〜4/15(日) SCAI THE BATHHOUSEでも展示
東京都台東区谷中6-1-23柏湯跡
(JR日暮里駅・根津駅・千駄木駅)
12:00〜19:00 日月休 無料
TEL.03(3821)1144
words:白坂ゆり
「Floating Time(時の浮遊)V1-100」蚊帳のような空間に入り、手のひらですくう。幽 玄で、おとぎの世界にいるようなフシギな時間感覚
「Counter Voice in Milk」大画面と林立するビデオモニターの展示。ちなみにミ ルクは、誕生から生育に欠かせない食糧だから
「Count Down Drawing against the Wall」ドリル・ドローイングのビデオ。壁と合わせて見て。(以上、東京オペラシティアートギャラリー)
「Counter Voice in the Air」(3/11、ワタリウム美術館)オーディションで選ばれた4人が、ワイヤーで2、3m吊り上げられ、カウンティングした。悩むように、撃たれたように、遠くへ駆けていくようになど、さまざまな表現があった
「Monism Dualism」(4/15まで、SCAI THE BATHHOUSEにて展示)赤と緑で縦型の新作L.E.D。聖堂や「那智の滝」のイメージ
2000-03-03 at 03:14 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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