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2000/03/11

モルフェ2000〜亜細亜遺伝子&東恩納裕一展

「青山を歩こう」


■毎年、青山を中心にギャラリー、ブティック、銭湯など30カ所で行われているアートイベント「Morphe(モルフェ)」。早速マイ・ローラーボードで回りました! 5回目の今年は、「ASIAN MEME(亜細亜遺伝子)」というテーマで、日本の作家と「ARTscope Hong Kong 2000」という香港のアーティスト14人の展示。 「ARTscope…」は今後、香港とNYへ巡回するそうで、香港映画ファンの友人も情報を聞きつけていた。歴史に翻弄される計り知れない思いを知ると同時に、同時代を生きる個人として、どこか身近にも感じられる展示だ。

■キース・ツァン タク ピンの作品は、'97年の中国返還をモチーフにした、植民地時代の終わりを象徴する墓や祭壇のインスタレーション。ある日を境に自国の文化が足元から変わる−−。彼は、記憶や日常生活の集積から作品をつくることで、“自分自身”を取り戻そうとしている。砕けたガラスは傷心を表しているのだろうが、凛とした輝きは失っていないように見えた。

■リョン・チー ウォは、留学先のNYの空がモチーフ。空の向こうに何があるのか、自分はどこにいるのか。彼は最初に見た何かを手にしようと写真や立体にして確かめる。しかも飲まれるのではなくクッキーにして食べちゃう。ユーモラスでポジティブ! ナイスアイデア賞!

■ホー・シウ ケイは、宇宙の原理をカラダで確かめる作家。今回は顔のモーフィングだが、ボールを足に履いて歩いたり、人間分度器になった冊子も必見! 25歳、最年少作家のチェ・イム オンは、TVやゲームで見てきた暴力や色情を描き、本にして展示。高層団地から自殺する人さえコミック感覚だ。

■もとみやかをるの作品は、金色の鮎の影が陽の光でガラスやたらいの水に映り込み、青山の街に鮎が放流されるイメージ。展示プレートに道元の言葉が添えてあるが、産卵期の鮎は新しい遺伝子を産みに川を下り、若鮎は終わりのない海へ旅立つようだ。

■モルフェではないが、マップに位置も記してあるので、寄ってほしいのが「東恩納裕一展」。“ファンシー”なレースのカーテン、リボンなどを使って日本の中流家庭のイメージを問う。自分の家にもあったなあと思うと、ドローンと「イヤんなっちゃうなー、弱ったなー」と考えさせられる。サイケでラディカルな空間。

■日本でも、西洋に対するアイデンティティの問題についてはさんざんいわれ、伝統や日常を見直したり、人生と一体化したり、個を突き詰めて普遍を見出そうとするアートが多い。経済も傾き気味というが、でも、香港のアートは何かタフだった。マップを手に入れてぜひ、回ってみてほしい。

モルフェ2000 亜細亜遺伝子
2000年3月11日(土)〜26日(日)
すべて無料 詳細は各展示場にあるマップを参照のこと
事務局TEL.03(5466)3529中世古佳伸スペース
(事務局でも展示あり。3/25まで「三田村光土里展」)

(1)〜3/25 AKI-EX GALLERY(オスカー・ホーのドローイングも展示)
東京都港区南青山5-4-44南青山シティハウス
13:00〜18:00(電話予約で22:00まで) 日・3/20休
TEL.03(3499)4254

(2)〜3/22 ラパン・エ・アロ
渋谷区神宮前5-44-2
11:00〜18:00 無休
TEL.03(5469)2570

(3),(4)〜3/25 スピカミュージアム
港区南青山4-6-5
11:00〜19:00 日・3/20休
TEL.03(5414)2264

(5)〜3/25 小原流会館1Fロビー
港区南青山5-7-17
11:00〜19:00 無休
TEL.03(3499)1200

(6)3月3日(金)〜27日(月)
NADiff(ナディッフ)
渋谷区神宮前4-9-8カソレール原宿B1
11:00〜20:00 無休
TEL.03(3403)8814

words:白坂ゆり

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キース・ツァン タク ピン 曽徳平「無題」(1)花弁の上に砕けたガラス。返還されて最初の頃、何のポリシーもなく香港特別行政区のシンボルマークとされた花だそう。

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リョン・チー ウォ 梁志和「CHAMBERS」(2)NYのビルの谷間から見た空の形を写真に撮り、立体化し、クッキーにも。(クッキーはサラ・ウォンとの共作で、観客に配る様子は、今回は映像で展示)。

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ホー・シウ ケイ 何兆基「Features:相違のはざま」(3)モーフィングしたビデオ写真で、理想の顔と個性を問う。

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チェ・イム オン 謝炎安「エース・チーム」(4)子供の頃「今回は落ち方がいまいち」なんて話していたくらい、リアルな日常だった飛び降り自殺。ヒーローのダイブ・シーン、または空に飛び上がっていくようにも見える

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もとみやかをる「release(落ち鮎)」(5)和菓子の型でかたどった鮎が吊り下げられている。床には小豆が直角青海波の模様に敷き詰められ、砂糖が盛られている。夜も幻想的。

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東恩納裕一「雛形」展より。左「Untitled(Window)」、右「Untitled(Bar2)、床「Untitled(Camouflage Pattern)」(6)カフェ内やショーケースにも展示あり。

2000-03-11 at 12:02 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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