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1999/05/17

明和電機の百貨展'99

「抽象企業アート」

art58_01青い作業服がトレードマークの明和電機土佐兄弟。98年に吉本興業に移籍。ソニー在籍時代には音楽CDやビデオも多数発売している。兄正道(右)はときおり単独でライヴ出演したりもする芸達者な人物。

■たけしの番組「誰でもピカソ」のレギュラー出演も板につき、吉本興業がマネージメントする初の芸人アーティストとして、すっかりおなじみになった明和電機。彼ら、土佐正道と信道の兄弟ユニットが、彫刻の森美術館での展覧会につづいて、都心でも大きな美術展を開いたというので、出かけてみた。場所は小田急デパートの上の小田急美術館。ゆえに、タイトルはずばり「百貨展'99」。

■会場の入口付近には、93年結成以来の明和電機のあゆみが、パネル展示されていた。ソニーのアート・アーティスト・オーディショングランプリ受賞をきっかけにデビューした彼らは、親の会社だったいまはなき「明和電機」を名乗り、それぞれ社長、副社長として、下町の古きよき中小製造会社の企業活動をシミュレートしつつ、「製品」としてのアート作品をつくり、そのプレゼン・パフォーマンスや企業説明の印刷物発行などの多角的な事業を行なってきた。だから今回も、美術展というよりはむしろ製品展示会といったほうがしっくりする。マジメくさった顔でギャグを連発するヘンテコな芸風や、中小企業を装いながらじつは大企業の支援でそれを実現するしたたかな戦略などなど、なにかと気になる存在なんである。

■メイン会場には、そうした「明和電機」製のほぼ全作品が、ずらりと並べられていた。「100Vの電気で動くアコースティックな楽器:ツクバ・シリーズ」は、複数のシンバルやバチがただ取り付けられただけの「6種類の音を出す電動ドラムマシン:音源」をはじめ、コンピュータを使ったテクノサウンドをおちょくるロウテクな品々だ。パフォーマンス・ビデオとあわせて見ると、さらにとぼけた笑いを誘うおかしなシロモノである。

■また後半の「魚器(なき)シリーズ」は、魚に関連づけたやはりユーモラスな機械類。魚の視界をシミュレーションして現実逃避するストレス解消用眼鏡「ウオノメ」とか、ハイテク社会の人のココロをなごませる無用(?)の発明品が山ほどある。タイトルに失笑しつつ機械の仕組みを考えながらじっくり見ていくのは予想以上に楽しい体験である。

■精密な手づくりの製品は、一部大量製品化され、全国で販売されるほかに受注生産も行なっているそうだ。新作もぞくぞく登場しているし、ちょっと手がでないなという人向けにちゃんとキャラ・グッズも売られていて、会場を出てくる頃には、すっかり明和電機の企業戦略にはまってしまっていた。

「明和電機 百貨展'99」
1999年3月17日(水)-4月4日(日)
小田急美術館
東京都新宿区西新宿1-1-3
小田急百貨店本館11階
tel.03-5325-2326
10:00~17:00
(入場は閉館30分前まで) 無休

words:宮村周子

art58_02奥がツクバシリーズより「ギターラ」。足踏みオルガンで遠隔操作するコントローラー内蔵の電動ギター。手前はリモコン型タップシューズ「タラッター」。(以下解説は商品カタログ参照)

art58_03「ウルトラフォーク」。ギター型電源スイッチ。スプリングの弦をピックで弾くと、電機が流れる。4系統の電源出力。

art58_04魚器シリーズより「ハンマーヘッド」。鯉の動きを「あなた好み」に制御できる、まさに「鯉の奴隷」。パンチカード方式。

art58_05販売を目的とした量産型魚器「GMサバオ」をモデルにした携帯用ストラップ。上のボタンを押すと口がカクカクする。900円。ほかにも明和ノートや下敷き、鉛筆など有り。

art58_06週末の会場は人で一杯。製品紹介のビデオ上映がウケていた。手前は「グラスカープ」。

1999-05-17 at 11:22 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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